男性更年期障害の治療において、本人の受診と同様に重要なのが、周囲で見守る家族の理解と対応です。今回は、長年メンズヘルス外来で数多くの症例を診てきた専門医にお話を伺いました。先生はまず、男性のイライラが「SOSの裏返し」であることを強調されます。男性は社会的な役割から、弱音を吐くことを禁じられている場合が多く、内面的な不安や体の不調が、攻撃的な態度や怒りという形でしか表出できないことが多いのだそうです。診察室に来る患者さんの多くが、家族との関係が破綻寸前になってから訪れる現状を、先生は非常に残念に思っていらっしゃいます。家族、特にパートナーの方に知っておいてほしいのは、更年期の男性が放つトゲのある言葉は、彼自身の本意ではなく、脳が酸欠のような状態になっているために出ている「反射」であるという点です。もし夫が不自然にイライラし始めたら、「なぜそんな言い方をするの」と正面から反論するのではなく、「最近疲れがたまっているようだけれど、ホルモンのバランスでも崩れているのかもしれないね」と、体調の問題として切り出すことが受診へのハードルを下げます。また、更年期障害によるイライラは、しばしば「うつ病」と見分けがつきにくいことがありますが、先生によれば、うつ病が自分を責める方向に向かうのに対し、更年期障害は外側(周囲)に不満が向かいやすいという特徴があるそうです。しかし、その根底にあるのは激しい疲労感と自信の喪失です。家庭での向き合い方のコツとして、先生は「適度な距離感」と「具体的な称賛」を挙げられました。夫のイライラに巻き込まれそうになったら、物理的に別の部屋へ移動するなどして衝突を避けつつ、彼がこなしている日常の些細な仕事、例えばゴミ出しや庭の手入れなどに対して、具体的に感謝を伝えることが、テストステロンの分泌を促す良好な刺激になります。男性にとって、自分の存在価値を認められることは、どんな薬よりもホルモン値を上げる効果があるのです。最後に先生は、「更年期は夫婦や家族の関係をアップデートするチャンスでもあります。病気を敵として一緒に立ち向かう姿勢を持つことが、完治後のより深い絆に繋がります」と締めくくられました。専門医の言葉は、イライラという不快な症状の向こう側にいる一人の男性の苦悩に光を当て、家族が共に歩むための確かな道標を示しています。
専門医が語る男性更年期の精神症状と家族の向き合い方