交通事故の被害者が病院に通い始めると、ほどなくして加害者の保険会社との窓口担当者との交渉が始まります。このやり取りをストレスなく、かつ円滑に進めるためには、医療現場におけるいくつかの「通院の鉄則」を守らなければなりません。第一の鉄則は、通院の頻度を一定に保つことです。痛みが強いときは毎日通い、少し良くなると一ヶ月も放置する、といった不規則な通院パターンは、保険会社から「もう治ったのではないか」あるいは「本当に痛いのか」と疑われる材料になります。医学的にもリハビリテーションは継続性が重要ですが、保険実務においても「症状の継続性」が評価の対象となるため、週に二、三回程度の適切な頻度で通い続けることが、自分の権利を守ることに繋がります。第二の鉄則は、健康保険の使用についてです。交通事故=自賠責保険や任意保険というイメージがありますが、実は交通事故の治療であっても健康保険(第三者行為による傷病届けが必要)を使用することは可能です。治療が長期化しそうな場合や、過失割合で揉めている場合などは、健康保険を使用することで総治療費を抑え、賠償金の目減りを防ぐ戦略的な選択となります。ただし、病院によっては交通事故での健康保険利用を断られるケースもあるため、事前に確認が必要です。第三の鉄則は、医師への症状報告を「具体的かつ一貫性のあるもの」にすることです。前回の診察では「首が痛い」と言い、今回は「全然大丈夫」と言い、次回また「激痛がする」と言うような一貫性のない訴えは、医学的信頼性を損なわせます。毎日の痛みの強さをノートに記録し、それを医師に見せることで、カルテに客観的な経過が残され、将来の後遺障害診断書の作成時にも大きな力となります。また、病院への通院交通費や、診断書料の領収書は一枚残らず保管しておきましょう。これらはすべて賠償の対象となります。保険会社の担当者は効率化を求めますが、あなたは自分の身体を一番に考えるべきです。医師の指示する通院期間を守り、安易な「症状固定」や「示談」の勧誘に乗らないこと。医療の専門的な助言を盾にしながら、冷静かつ論理的に保険会社と向き合うことが、正当な治療を受ける権利を全うするための鉄則なのです。
保険会社とのやり取りをスムーズにする通院の鉄則