毎日、冷房の効いたオフィスと炎天下の往復で体が疲れ切っていたのか、ある月曜日の朝、私は激しい寒気とともに目が覚めました。最初は冷房で喉を痛めたかな、くらいに思っていたのですが、会社に到着する頃には節々が痛み出し、早退を余儀なくされました。自宅に戻って熱を測ると、すでに三十九度。喉を鏡で見てみると、奥の方に小さな赤い水ぶくれがいくつも並んでいて、その異様な光景に背筋が凍りました。病院へ行くと、医師から「あー、ヘルパンギーナですね。大人は珍しいけれど、最近増えているんですよ」とあっさり言われました。正直なところ、子供の病気だと思っていた自分が恥ずかしく、それ以上に喉の痛みが刻一刻と増していく恐怖に怯えていました。それからの三日間は、まさに生き地獄でした。唾液を飲み込むだけで喉が裂けるような感覚があり、声を出すこともできません。仕事の電話がかかってきても対応できず、ただ布団の中で唸るしかありませんでした。友人からは「夏風邪なんて寝てれば治るよ」と軽い励ましをもらいましたが、このヘルパンギーナという奴は、そんな生易しいものではありません。脳が「飲み込むな」と命令しているかのような拒絶反応。空腹なのに、目の前の冷やしうどんが恐ろしい武器に見える。そんな極限状態の中で、私は自分の健康管理がいかに疎かだったかを反省しました。大人は、多少の熱があっても気合でなんとかなると思いがちですが、ウイルスには根性なんて通用しません。結局、一週間近く仕事を休み、取引先には多大な迷惑をかけてしまいました。この病気を通じて学んだのは、大人の休養は「回復するため」だけではなく「他人にうつさない責任を果たすため」にあるということです。熱が下がっても、喉に潰瘍が残っている間はまだ体調は万全ではありません。私は今、ようやくお粥から普通の食事に戻りつつありますが、あの日々の苦しみを思い出すと、もう二度と夏風邪だと侮ることはありません。もし、周りに「喉が痛くて高熱が出た」という大人がいたら、私は優しく、しかし厳しく言いたいと思います。「それはヘルパンギーナかもしれない。今すぐすべての予定をキャンセルして、静かな部屋で氷を舐めながら寝なさい」と。大人の夏は、楽しさの裏側にこうした伏兵が潜んでいるのだと、身をもって知った夏の出来事でした。
夏風邪だと思ったらヘルパンギーナだった大人の私の独り言