都内の広告代理店で働く花子さんは、三十歳という節目を迎え、キャリアも私生活も充実した毎日を送っていました。しかし、あるプロジェクトの繁忙期を境に、彼女を正体不明の不調が襲いました。まず、夜が全く眠れなくなりました。布団に入っても心臓がバクバクと大きな音を立てて波打ち、焦れば焦るほど目が冴えてしまいます。また、冷房の効いたオフィスにいるのに、彼女だけが常に汗をかいており、会議中もハンカチが手放せませんでした。さらに、ダイエットもしていないのに二ヶ月で五キロも体重が落ち、周囲からは「やつれたね」と心配されるようになりました。花子さんは最初、ひどい自律神経失調症か、あるいは若年性の更年期障害ではないかと疑い、何科に行くべきか迷いながらも、まずは通勤途中にあるレディースクリニックを受診しました。しかし、そこで行われた基本的な検査では大きな異常は見つからず、念のためにと勧められたのが内分泌内科への受診でした。バセドウ病は何科に行けばいいのか、そのとき初めて彼女はこの病名と専門科の存在を知りました。内分泌内科を訪れた彼女を待っていたのは、丁寧な首の触診と詳細な血液検査でした。医師は彼女の指先の微かな震えを見逃さず、「これは典型的なバセドウ病の症状ですよ」と告げました。検査の結果、彼女の体内では甲状腺ホルモンが通常の三倍も分泌されており、まさに車がアクセル全開で空回りしているような状態だったのです。幸い、早期発見だったため、内服治療によって症状は速やかに落ち着き始めました。花子さんは後に、「自分が何科に行くべきか、もっと早く知っていれば、あんなにボロボロになるまで頑張りすぎなかったのに」と振り返っています。彼女の場合、甲状腺機能の亢進による眼の乾燥も気になっていたため、紹介された眼科でも定期的なチェックを受けることになりました。働く女性にとって、突然の体調不良はキャリアの不安にも直結します。バセドウ病は何科かという知識を持っておくことは、自分自身のポテンシャルを守るための重要なリテラシーです。現在、花子さんは治療を続けながら、無理のない範囲で以前のように第一線で活躍しています。バセドウ病は、適切な専門科と繋がることさえできれば、決して人生の足止めをさせる病気ではありません。彼女の経験は、同じように不調を抱えながら頑張り続けている多くの女性たちに、専門医を頼ることの大切さを静かに伝えています。
働く女性が突然の体調不良からバセドウ病を見つけるまで