あれは雨の日の夕方のことでした。信号待ちをしていた私の車に、後方からかなりの速度で別の車が追突しました。衝撃で首がガクンとなりましたが、その時はパニック状態で、相手への対応や警察への連絡に追われ、自分の身体のことなど全く意識にありませんでした。現場に来た警察官から「どこか痛いところはありませんか?病院へ行きますか?」と聞かれましたが、私は「少し動悸がするくらいで、怪我はないようです」と答えてしまいました。これが、後々にまで続く苦しみの始まりでした。翌朝、目が覚めると首のあたりが鉄板のように硬くなり、枕から頭を持ち上げることさえ困難なほどの重だるさに襲われました。それでも私は「そのうち治るだろう」と高を括り、湿布を貼って仕事を続けました。一週間が経つ頃、痛みは首だけでなく肩や背中、さらには指先にまで痺れとして広がり始めました。ようやく重い腰を上げて整形外科を受診したとき、医師から言われた言葉は衝撃的でした。「なぜもっと早く来なかったのですか。事故から時間が経ちすぎていると、保険会社から因果関係を疑われますよ」と。検査の結果、頸椎の神経が圧迫されており、治療には数ヶ月を要するとのことでした。医師の予言通り、相手側の保険会社との交渉は難航しました。事故直後の警察の調書に「無傷」と記載されていたこと、そして病院への初診が一週間も遅れたことが原因で、治療費の支払いを拒否されそうになったのです。身体の激痛に耐えながら、自分の正当性を主張するために奔走する日々は、事故そのものよりも精神的に過酷なものでした。もし、あの事故当日にどんなに忙しくても、どんなに痛みがなくても病院へ駆け込んでいれば、医学的な記録が私の正当性を守ってくれたはずです。結局、半年間の通院とリハビリを経て日常生活に戻れましたが、あの時の一瞬の油断が招いた経済的・精神的な損失は計り知れません。交通事故における病院受診は、単に痛みを治すためのものではなく、自分の尊厳と権利を守るための儀式なのだと痛感しました。今、事故に遭って「大丈夫」だと思っている方がいれば、私は大きな声で伝えたいです。あなたの身体は、あなた自身が思っている以上にダメージを受けています。後悔する前に、一刻も早く専門医の診察を受けてください。