私は、かつて自分が周囲から「穏やかで冷静な人間」だと思われていることに誇りを持っていました。しかし、四十八歳を迎えた頃から、自分でも信じられないような変化が起き始めました。朝起きた瞬間から何とも言えない不快な重苦しさがあり、通勤電車の些細な物音や、家族の何気ない一言に対して、胃の底から煮えくり返るような激しい怒りを感じるようになったのです。特に仕事場では、部下の書類のホチキスの位置が少しずれているだけで、我を忘れて怒鳴り散らしてしまいました。後で冷静になれば、そんなことで怒る必要は全くなかったと激しい自己嫌悪に陥るのですが、その瞬間だけは感情に蓋をすることがどうしてもできませんでした。妻からは「最近、以前のあなたとは別人のようだよ」と泣きながら言われ、私はついに、自分が何か重大な心の病にかかったのではないかと恐ろしくなり、病院を訪れることにしました。当初は心療内科を受診しようと考えていましたが、インターネットで調べていくうちに「男性更年期障害」の症状に自分の状態が驚くほど酷似していることに気づき、メンズヘルス外来を掲げる泌尿器科の門を叩きました。そこで行われた血液検査の結果、私のテストステロン値は同年代の平均値を大きく下回っていることが判明しました。医師から「あなたのイライラは性格のせいではなく、ホルモンの枯渇によるものです」と言われたとき、私は情けないことにその場で涙が溢れてしまいました。自分の努力不足や人間性の欠如だと思い込み、ずっと自分を責め続けてきたからです。治療として三週間に一度のホルモン注射と、漢方薬の服用を開始しました。併せて、医師からのアドバイスで、夜寝る前のスマートフォンの使用を控え、週末には軽いウォーキングを取り入れるようにしました。治療を開始して三ヶ月が経った頃、あんなに強固だった頭の中の霧が晴れ、激しい怒りの衝動が消えていくのを実感しました。今では、部下のミスに対しても「次はこうしよう」と前向きな対話ができるようになり、家族との食卓も笑い声が戻っています。あの時、勇気を出して病院へ行き、自分の不調の正体を知ることができて本当に良かったと思います。男性更年期は、人生の後半戦をより良く生きるための「自分を見つめ直す休憩時間」のようなものだったのかもしれません。もし今、同じように自分の感情がコントロールできずに苦しんでいる方がいたら、それはあなたのせいではないことを伝えたいです。適切な治療と理解があれば、再び自分らしい平穏な毎日を取り戻すことは十分に可能なのです。
突然の怒りを抑えられない私が更年期を克服するまで