交通事故に遭い、病院を受診した際に最も重要となる書類が「診断書」です。この一枚の紙が、被害者の被った身体的苦痛を客観的な事実として社会的に証明する唯一の手段となります。技術的な視点から、この診断書をいかに正しく、漏れなく作成してもらうかは、その後の損害賠償や後遺障害の認定において決定的な影響を及ぼします。まず、受診時の伝え方には細心の注意が必要です。痛みがある部位については、どんなに小さな違和感であっても、初診時にすべて医師に報告し、カルテに記録してもらうことが鉄則です。例えば、首の痛みが主症状であったとしても、腰にかすかな違和感がある、あるいは膝に小さな青あざがあるといった情報を伝えておかないと、数週間後にその部位が悪化した際、「事故との関係が不明」と判断されてしまうリスクがあります。診断書の傷病名については、医師にお任せする形にはなりますが、自分の自覚症状が適切に反映されているかを確認する権利が患者にはあります。特に「むちうち」の場合、頸椎捻挫や外傷性頸部症候群といった傷病名が一般的ですが、これに加えて神経根症状の有無など、より詳細な医学的所見が記載されることが望ましいです。また、診断書に記載される「全治〇週間」という期間は、あくまでその時点での予測に過ぎません。治療を続ける中で痛みや症状が長引く場合は、その都度、追加の診断書や経過報告書が必要になります。診断書を作成してもらうタイミングについても、事故からあまりに日数が経過してからでは、医師も事故との因果関係を断定できなくなるため、必ず当日、遅くとも数日以内に受診することが不可欠です。病院での診察料とは別に診断書の作成料(数千円程度)がかかりますが、これは必要経費として割り切るべきでしょう。後遺症が残る可能性を視野に入れるならば、初期の段階からMRIなどの画像検査を依頼し、目に見えない損傷の証拠を残しておくことも、高度な自衛手段となります。医師は医学の専門家ですが、交通事故の法律的なルールに精通しているとは限りません。だからこそ、患者自身が「証拠を残す」という意識を持って診察に臨み、必要な情報が過不足なく診断書に盛り込まれるよう医師と積極的にコミュニケーションを取ることが、正当な権利を勝ち取るための第一歩となるのです。
交通事故の怪我を証明する診断書の正しい作成方法