睡眠時無呼吸症候群は「太った中年男性の病気」という固定観念が強いですが、女性や子供にも特有の症状として現れることがあり、その見逃されやすさが大きな問題となっています。女性の場合、女性ホルモンであるプロゲステロンに気道を広げる筋肉を刺激する働きがあるため、閉経前までは発症しにくいとされています。しかし、更年期を境にホルモンバランスが変化すると、筋肉の緊張が失われ、無呼吸のリスクが急増します。女性の無呼吸症状は、男性のように激しいいびきを伴わないことが多く、代わりに「寝つきが悪い」「夜中に何度も目が覚める」「朝から体がだるい」といった、不眠症や更年期障害、うつ病と非常に似た形で現れるのが特徴です。そのため、適切な診断を受けずに精神安定剤などを処方されてしまい、その副作用でさらに気道の筋肉が緩んで無呼吸が悪化するという危険なケースも散見されます。一方、子供の睡眠時無呼吸症候群も極めて重要です。子供の主な原因は、アデノイドや扁桃腺の肥大です。症状としては、いびきはもちろんですが、寝相が異常に悪い、寝汗が多い、口を開けて寝ている、といったことが挙げられます。また、日中の症状としては、眠気だけでなく「落ち着きがない」「集中力がない」「イライラしやすい」といった行動異常として現れることが多く、注意欠陥多動性障害、いわゆるADHDと間違われることもあります。睡眠中に成長ホルモンが十分に分泌されないため、成長の遅れや漏斗胸の原因になることもあり、早期の発見と介入がその後の発達に大きく影響します。夜尿症(おねしょ)がなかなか治らない背景に無呼吸が隠れていることもあります。このように、男性以外の層における睡眠時無呼吸症候群は、典型的なイメージとは異なる「仮面」を被って現れることが多いのです。自分や家族が、一般的に言われるような無呼吸のイメージに当てはまらなくても、睡眠に関連する何らかの不調を抱えているのであれば、呼吸の状態を疑ってみる必要があります。睡眠の質を改善することは、すべての世代において健康と健全な発達を守るための基盤であり、その多様な症状を正しく理解することが、見過ごされがちなリスクを回避する唯一の手立てとなるのです。
女性や子供に現れる睡眠時無呼吸症候群の症状とその特異性