心房細動は心臓の上部に位置する心房が細かく震え、血液が効率よく送り出せなくなる不整脈の一種です。この病態に対する現代の治療法は、主に三つの柱によって構成されています。第一の柱は、心房内での血流の淀みによって発生する血栓を防ぎ、脳梗塞を予防するための抗凝固療法です。心房細動の最大の懸念は、震える心房の中で固まった血の塊が脳へ飛んで太い血管を詰まらせるノックアウト型脳梗塞にあります。かつてはワルファリンが主役でしたが、現在は食事制限が少なく、定期的な血液検査による調整も簡便な非ビタミンK阻害経口抗凝固薬が主流となっています。第二の柱は、乱れた心拍数を適切に管理するレートコントロール療法です。心房が細かく震えることで、心室まで過剰な刺激が伝わり、心拍数が異常に速くなることがあります。これを放置すると心臓が疲弊し、心不全を招くため、ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬を用いて心拍数を落ち着かせ、心臓の負担を軽減します。第三の柱は、不整脈そのものを止めて正常なリズムを取り戻すリズムコントロール療法です。これには抗不整脈薬による薬物療法のほか、近年急速に普及しているカテーテルアブレーションがあります。カテーテルアブレーションは、足の付け根の血管から心臓まで細い管を通し、不整脈の原因となっている部位を熱や冷気で焼き切る、あるいは凍結させる治療法です。特に発作性の心房細動に対しては高い成功率を誇り、根治を目指せる選択肢として定着しています。治療法の選択にあたっては、患者の年齢や症状の強さ、合併症の有無、そして心房細動が発症してからの期間が重要視されます。早期に治療を開始すれば、心房の構造的な変化を防ぎ、より良好な予後を期待できることが分かってきました。心房細動は加齢とともに増加する疾患であり、超高齢社会を迎えた日本においてその管理は公衆衛生上の大きな課題となっています。単に動悸を止めるだけでなく、将来の寝たきり原因となる脳梗塞や、生命を脅かす心不全を未然に防ぐことが、心房細動治療の真の目的と言えるでしょう。
心房細動の治療法と最新の医療指針