私が足の裏の異変に初めて気づいたのは、45歳の秋、健康のためにランニングを再開して数ヶ月が経った頃でした。朝、ベッドから降りた瞬間、右足のかかとに、まるで画鋲を踏んだかのような鋭い痛みが走ったのです。あまりの痛みに、思わず「痛っ!」と声が出ました。しかし、不思議なことに、数歩歩くと痛みは少しずつ薄れ、会社に着く頃にはほとんど気にならなくなっていました。その日から、毎朝、この「第一歩の儀式」が繰り返されるようになりました。痛みは朝だけでなく、会議で長時間座った後に立ち上がる時にも現れました。ランニング中も、走り始めは痛むものの、体が温まると痛みが消えるため、「ただの使いすぎだろう」と、私は深刻に考えず、ストレッチをしながら走り続けていました。しかし、症状は徐々に悪化。やがて、一日中、鈍い痛みが続くようになり、ランニングの楽しさよりも、痛みの苦痛が上回るようになってしまいました。これではいけないと、ようやく整形外科のドアを叩きました。医師は私の話を聞き、かかとを押さえるなり、「ああ、これは典型的な足底腱膜炎ですね」と診断しました。レントゲンでは骨に異常はなく、長年の立ち仕事と、急なランニングの再開によるオーバーユースが原因だろうとのことでした。治療として、まずは運動を完全に中止し、処方された湿布を貼り、そして何よりもふくらはぎのストレッチを徹底するよう指導されました。最初は「走れない」ということが大きなストレスでしたが、指導通りに毎日、朝晩とストレッチを続けるうちに、頑固だったかかとの痛みが、少しずつ、本当に少しずつ和らいでいくのを感じました。痛みが軽減してからは、医師の指導のもと、インソール(足底板)を作成し、靴も見直しました。完全に痛みがなくなるまでには半年以上かかりましたが、あの朝の激痛から解放された時の喜びは、今でも忘れられません。この経験を通じて、私は自分の体を過信せず、痛みというサインに真摯に耳を傾けることの重要性を学びました。
消えない足裏の痛み。私が足底腱膜炎と向き合った日々