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小児科卒業のタイミング、高校生が内科へ移行する目安
いつまでも小児科にお世話になるわけにはいかない。そう頭ではわかっていても、いざ「小児科卒業」のタイミングとなると、本人も親も、なかなか決断がつかないものです。長年お世話になった安心感を手放し、新しい内科の先生を探すのは、勇気がいることかもしれません。では、どのようなタイミングを目安に、内科への移行を考え始めるのが良いのでしょうか。いくつかの具体的なサインやきっかけがあります。まず、最もわかりやすいのが「本人の気持ちの変化」です。待合室で、泣いている赤ちゃんや、走り回る小さな子供たちに囲まれていることに、高校生の本人が「気まずい」「恥ずかしい」と感じ始めたら、それは一つの卒業のサインです。自分の健康について、より大人として向き合いたい、という自立心の表れでもあります。親が無理に小児科へ連れて行くのではなく、本人の気持ちを尊重し、一緒に内科を探してあげる良い機会と捉えましょう。次に、「症状の種類」が変わってきた時です。これまでは風邪や感染症が中心だったけれど、最近、生活習慣の乱れからくる不調や、ストレスによる胃の痛み、あるいは女性であれば月経に関するトラブルなど、より「大人の病気」に近い症状で悩むようになったら、それぞれの専門性を持つ内科や婦人科などへの移行を検討すべきタイミングです。特に、生活習慣病などは、長期的な視点での管理が必要となるため、早い段階から内科医に相談するのが望ましいでしょう。また、「物理的な理由」もあります。多くの小児科クリニックは、十五歳(中学生まで)を対象年齢の上限としていることが少なくありません。高校生になった時点で、かかりつけの小児科から「次からは内科へどうぞ」と促されるケースも一般的です。これを、自然な卒業のタイミングと捉えるのが良いでしょう。内科へ移行する際には、これまでの病歴や予防接種の記録、アレルギー情報などをまとめた「紹介状(診療情報提供書)」を、小児科の先生に書いてもらうことが非常に重要です。これがあれば、内科の医師もスムーズに情報を引き継ぐことができ、安心して新しい医療関係をスタートさせることができます。小児科卒業は、子供が自分の健康管理に責任を持つ、大人への大切な一歩なのです。
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自律神経失調症を疑ったら、最初に何科へ行くべきか
めまい、動悸、頭痛、原因不明の倦怠感。体は確かにつらいのに、病院で検査をしても「特に異常はありません」と言われてしまう。そんな、出口の見えない不調に悩んでいる方は、もしかしたら「自律神経失調症」かもしれません。そして、多くの人が最初に直面する壁が、「一体、何科を受診すれば良いのだろう?」という問題です。この問いに対する答えは一つではありませんが、最も適切なアプローチを知っておくことが、ドクターショッピングを避け、的確な治療への最短ルートとなります。結論から言うと、自律神経失調症を専門的に診断・治療する診療科は「心療内科」です。心療内科は、ストレスなどの心理的な要因が、体の症状(心身症)として現れている状態を専門に扱います。自律神経失調症は、まさにこの心身症の代表格であり、心療内科医は、薬物療法だけでなく、カウンセリングや生活指導を通じて、心と体の両面からアプローチしてくれます。しかし、いきなり心療内科を受診することに、ハードルの高さを感じる方も少なくないでしょう。また、その症状が、本当に自律神経だけの問題なのか、あるいは何か身体的な病気が隠れていないかを確認することも非常に重要です。そこで、もう一つの賢明な選択肢が、まず「一般内科」や「総合診療科」を受診することです。内科では、血液検査や心電図などを用いて、甲状腺の病気や貧血、心臓疾患といった、似たような症状を引き起こす可能性のある「器質的な病気」がないかどうかをスクリーニングしてくれます。ここで「身体的には大きな問題はない」というお墨付きをもらうことは、大きな安心材料となり、その後の治療への重要なステップとなります。そして、内科で異常が見つからなかった場合に、医師から心療内科を紹介してもらう、という流れが非常にスムーズです。まずは、体の病気を見逃さないために内科へ。そして、心の専門家である心療内科へ。この二段階のアプローチが、原因不明の不調に悩むあなたを、正しい道筋へと導いてくれるでしょう。
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高校生は小児科?内科?年齢で見る上手な選び方
高校生にもなると、体はすっかり大人びてきますが、いざ風邪をひいたり、体調を崩したりした時に、「病院へ行くなら、今まで通り小児科?それとも、そろそろ内科へ行くべき?」と、本人も親御さんも迷ってしまうことがよくあります。この問いに対する明確な法律上の決まりはありませんが、上手な選び方のヒントは存在します。まず、日本小児科学会は、小児科が対象とする年齢を「子どもが成人するまで」としており、これはおおむね二十歳前後までを指します。つまり、高校生が小児科を受診することは、医学的な観点からは全く問題ありません。しかし、実際の医療現場では、クリニックごとに「中学生まで」「十五歳まで」といった独自の年齢制限を設けている場合も少なくありません。そのため、まずかかりつけの小児科に、高校生でも診てもらえるかを確認するのが第一歩となります。では、どのような場合にどちらの科を選ぶのが良いのでしょうか。一つの目安は「症状の種類」です。発熱や咳、鼻水といった、いわゆる「風邪」の症状であれば、子供の頃からの成長や体質をよく知る、かかりつけの小児科医に診てもらうのが安心でスムーズでしょう。予防接種の履歴なども全て把握してくれているため、的確な診断が期待できます。一方、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病の疑いや、胃潰瘍のような消化器の病気、あるいは月経に関する悩みなど、より「大人に近い病気」が考えられる場合は、内科や、それぞれの専門科(循環器内科、消化器内科、婦人科など)の受診を検討するのが賢明です。また、喘息やアレルギー、発達障害など、子供の頃から継続して治療を受けている「慢性疾患」がある場合は、病気の経過を最もよく理解している小児科医のもとで、成人医療へのスムーズな移行(トランジション)について相談しながら、治療を続けるのが理想的です。本人の気持ちも尊重しつつ、症状や病気の種類に応じて、柔軟に診療科を選ぶ。それが、高校生という、子供と大人の過渡期にある世代の、賢い医療機関のかかり方と言えるでしょう。
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いちご舌で病院へ、何科を受診するのが正解か
お子さんや、あるいはご自身の舌が、イチゴのように赤くブツブツになっていることに気づいた時、その異様な見た目に、不安を感じて病院へ行こうと考えるでしょう。しかし、その際に「一体、何科を受診すれば良いのだろう?」と迷ってしまうかもしれません。いちご舌という症状は、様々な病気のサインとして現れるため、伴っている他の症状によって、目指すべき診療科が変わってきます。ここでは、状況に応じた適切な受診先の選び方を解説します。まず、お子さんの場合で、「高熱」や「喉の痛み」、「全身の発疹」といった、明らかな感染症の症状を伴っている場合は、迷わず「小児科」を受診してください。小児科医は、子供の感染症の専門家です。溶連菌感染症や川崎病、手足口病など、いちご舌を呈する子供の病気を総合的に診察し、迅速検査キットなどを用いて、その場で原因を特定しようとします。かかりつけの小児科であれば、普段のお子さんの状態も把握しているため、より安心して相談できるでしょう。次に、大人の場合です。もし、「高熱」や「強い喉の痛み」といった、明らかな風邪症状を伴っているのであれば、「内科」あるいは「耳鼻咽喉科」が適切な相談先となります。溶連菌感染症の可能性を考慮し、必要な検査や抗生物質の処方を行ってくれます。もし、いちご舌の症状がメインで、他に全身症状がなく、「舌そのものの痛みや違和感」が強い場合や、「口内炎」などを併発している場合は、「歯科」や「口腔外科」を受診するという選択肢もあります。舌炎や、口腔内の環境に起因する問題である可能性を探ってくれます。そして、子供でも大人でも、もし「五日以上続く高熱」に加えて、「目の充血」や「手足の腫れ」など、複数の全身症状を伴う場合は、川崎病の可能性を念頭に置き、夜間や休日であっても、入院設備の整った「総合病院の小児科(子供の場合)や総合内科(大人の場合)」を受診することを強くお勧めします。このように、いちご舌というサインに、どのような症状が組み合わさっているかを見極めることが、正しい診療科への最短ルートとなるのです。
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自律神経の乱れが引き起こす、ふわふわめまいの正体
耳鼻科で検査をしても、脳神経外科でMRIを撮っても、「特に異常はありませんね」と言われてしまった。しかし、体は確かにふわふわ、ふらふらして、常に乗り物酔いのような不快感が続く。そんな、原因不明のめまいに悩まされている方は、非常に多くいらっしゃいます。その症状の正体は、もしかしたら「自律神経の乱れ」にあるのかもしれません。自律神経は、私たちの意思とは関係なく、呼吸や血圧、体温、消化といった、生命維持に不可欠な機能を自動的にコントロールしている神経です。活動モードの「交感神経」と、リラックスモードの「副交感神経」という、二つの神経が、まるでシーソーのようにバランスを取りながら働いています。しかし、精神的なストレスや、過労、睡眠不足、不規則な生活、あるいは気圧や気温の急激な変化といった、様々な要因によって、このシーソーのバランスが崩れてしまうことがあります。これが「自律神経失調症」と呼ばれる状態です。自律神経のバランスが乱れると、血圧のコントロールがうまくいかなくなったり、脳への血流が不安定になったりします。その結果、脳が一時的な酸欠や栄養不足の状態に陥り、それが「ふわふわ」「ふらふら」とした、浮動性のめまいとして感じられるのです。また、自律神経は、体の平衡感覚を司る内耳の機能にも影響を与えます。自律神経が乱れると、内耳の血流が悪化し、その働きが低下することで、めまいが生じやすくなるという側面もあります。このような自律神経の乱れによるめまいは、多くの場合、他の症状を伴います。例えば、「頭痛や肩こり」「動悸や息切れ」「胃の不快感や吐き気」「異常な発汗」「手足の冷え」「気分の落ち込みや不安感」などです。もし、あなたのふわふわめまいが、これらの症状とセットで現れているのであれば、その原因は自律神経にある可能性が高いと言えるでしょう。この場合の専門診療科は、「心療内科」や「精神科」となります。薬物療法だけでなく、生活習慣の改善や、ストレスとの向き合い方を学ぶことで、つらい症状からの回復が期待できます。
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持病を持つ高校生、小児科と内科の連携が鍵
気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、てんかん、発達障害、あるいは先天性の心疾患や腎疾患。子供の頃に発症し、物心ついた時からずっと小児科の専門医と共に歩んできた、慢性疾患を持つ高校生たち。彼らにとって、「小児科を卒業し、内科へ移行する」という問題は、単なる病院の変更ではなく、人生の大きな転換点であり、時に大きな不安を伴うものです。こうした子供たちの医療を、小児期から成人期へ、途切れることなくスムーズに引き継いでいくための取り組みを、「移行期医療(トランション)」と呼びます。そして、この成功の鍵を握るのが、「小児科医」と「成人診療科の医師」との密接な連携です。小児科医は、その子の病気が、成長や発達にどのような影響を与えてきたか、そして、本人の性格や家族のサポート体制まで含めて、長年にわたる全ての情報を把握しています。一方、成人診療科の医師(内科医、循環器内科医など)は、加齢に伴う合併症や、妊娠・出産、就労といった、成人期特有の問題に対応する専門家です。この二つの専門性が、うまくバトンタッチされなければ、患者さんは適切な医療を受けられなくなってしまう危険性があります。例えば、小児喘息の患者さんが、自己判断で突然内科に移った場合、新しい医師は、これまでの発作の頻度や、有効だった薬の種類などを一から把握しなければならず、最適な治療を提供するまでに時間がかかってしまうかもしれません。理想的な移行期医療では、まず、小児科の主治医が、患者さんが高校生くらいになった段階で、本人と家族に、成人医療への移行の必要性について説明を始めます。そして、患者さんの病状や居住地などを考慮して、最適な引き継ぎ先となる成人診療科の医師を探し、紹介します。その際には、これまでの詳細な治療経過をまとめた「診療情報提供書(紹介状)」を作成し、両科の医師が情報を共有します。場合によっては、しばらくの間、小児科と成人診療科の両方を並行して受診する期間を設けることもあります。持病を持つ高校生にとって、かかりつけの小児科医は、単なる医師ではなく、成長を見守ってくれた人生の伴走者のような存在です。その伴走者とよく相談しながら、焦らず、計画的に、次のステージへと進んでいくことが何よりも大切なのです。
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溶連菌検査が陰性なのに、いちご舌が治らない
小児科で「溶連菌かもしれない」と言われ、迅速検査を受けたけれど、結果は陰性。処方された風邪薬を飲んでいるのに、一向にいちご舌が治らない。そんな時、親御さんは「診断が間違っているのではないか」「何か他の悪い病気なのではないか」と、大きな不安を感じることでしょう。溶連菌検査が陰性であったにもかかわらず、いちご舌が続く場合、いくつかの可能性を考える必要があります。まず、最も考えられるのが、「溶連菌検査の偽陰性」です。迅速検査は、その場で結果がわかる非常に便利な検査ですが、その精度は100%ではありません。検査を行うタイミング(発症直後すぎるなど)や、喉の菌の採取がうまくいかなかった場合などに、本当は感染しているのに陰性と出てしまう「偽陰性」が、一定の確率で起こり得ます。もし、臨床症状(高熱、喉の所見など)から、医師が強く溶連菌感染症を疑う場合は、迅速検査が陰性であっても、より精度の高い「咽頭培養検査」を追加で行ったり、臨床診断に基づいて抗生物質の治療を開始したりすることがあります。次に、考慮すべきなのが、やはり「川崎病」の可能性です。川崎病の初期は、溶連菌感染症と症状が非常に似ているため、鑑別が難しいことがあります。溶連菌検査が陰性で、かつ、抗生物質が効かずに高熱が続き、目の充血や発疹など、他の川崎病の症状が徐々に現れてくる場合は、この病気の可能性を再度検討し、専門的な治療ができる医療機関へ紹介されることになります。また、他のウイルス感染症が原因である可能性もあります。アデノウイルスやEBウイルスなど、一部のウイルス感染症でも、喉が真っ赤になり、舌にブツブツとした変化が見られることがあります。これらのウイルスには特効薬はなく、対症療法で自然に回復するのを待つことになります。いずれにせよ、検査結果が陰性であったからといって、安心してしまうのは早計です。症状が改善しない、あるいは悪化していく場合は、必ず再度、医師の診察を受けてください。経過を注意深く観察し、診断を見直していくことが、本当の原因を見つけ出すための重要なプロセスなのです。
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私が変形性膝関節症と診断され、治療を始めるまで
五十歳を過ぎた頃から、なんとなく感じていた膝の違和感。それが、明確な「痛み」に変わったのは、ある朝、駅の階段を駆け下りようとした時でした。右膝の内側に、ズキンと電気が走るような鋭い痛みが走り、思わず手すりに掴まってしまいました。それ以来、立ち上がる時、歩き始める時、そして階段の上り下りといった、何気ない動作のたびに、膝の痛みが私を悩ませるようになりました。最初は、「年のせいだろう」「少し休めば治るだろう」と、ドラッグストアで買った湿布を貼ってごまかしていました。しかし、痛みは一向に改善せず、むしろ、膝が少し腫れて、正座ができないほど曲げにくくなっていることに気づきました。このままではいけない。そう思い、私は意を決して、近所の整形外科クリニックの扉を叩きました。診察室に入ると、医師は私の話をじっくりと聞き、膝を色々な方向に動かしたり、押したりして、痛みの場所や可動域を丁寧に確認しました。そして、「レントゲンを撮ってみましょう」ということになりました。レントゲン室で数枚の写真を撮り、再び診察室へ。医師は、モニターに映し出された私の膝のレントゲン写真を見せながら、こう説明しました。「膝の内側の、骨と骨の間の隙間が、少し狭くなっているのがわかりますか。これは、クッションの役割をしている軟骨がすり減ってきているサインです。典型的な『変形性膝関節症』の初期段階ですね」。初めて聞く病名に、私はショックを受けました。もう、元のように歩けなくなるのではないか。そんな不安が頭をよぎりました。しかし、医師は穏やかな口調で続けました。「大丈夫ですよ。初期の段階ですから、今からきちんと治療とセルフケアを始めれば、進行を遅らせ、痛みなく生活することは十分可能です」。その日、私は炎症を抑えるための湿布と、痛みが強い時のための飲み薬を処方されました。そして、治療の柱となる「ヒアルロン酸の関節内注射」を初めて受けました。さらに、理学療法士さんからは、膝周りの筋力を鍛えるための簡単な運動や、日常生活での注意点について、丁寧な指導を受けました。病名がわかり、治療方針が示されたことで、私の漠然とした不安は、「これから頑張ろう」という前向きな気持ちに変わっていきました。あの日、勇気を出して病院へ行って、本当によかったと思っています。