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2025年8月
  • 猩紅熱とは?溶連菌感染症との違いと特徴

    医療

    子供の病気について調べていると、「溶連菌感染症」と並んで、「猩紅熱(しょうこうねつ)」という病名を目にすることがあります。どちらも、いちご舌や発熱といった共通の症状があるため、混同されがちですが、この二つにはどのような違いがあるのでしょうか。実は、現代の医学では、猩紅熱は溶連菌感染症の「一つの特別な病型」として位置づけられています。つまり、原因となる病原体は、どちらも同じ「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」なのです。では、何が違うのかというと、それは感染した溶連菌が「発赤毒(ほっせきどく)」、別名「発疹毒」という特殊な毒素を産生する能力を持っているかどうか、という点です。ほとんどの溶連菌は、この毒素を産生しません。そのため、通常の溶連菌感染症では、主な症状は発熱、喉の痛み、そして、いちご舌といったものに留まります。しかし、発赤毒を産生するタイプの溶連菌に感染すると、その毒素が血流に乗って全身を駆け巡り、皮膚の毛細血管を拡張させます。その結果、喉の症状に加えて、全身に鮮やかな赤い、細かい発疹が広がるのです。これが「猩紅熱」です。猩紅熱の発疹は、首や胸から始まり、数日のうちに全身に広がります。特に、脇の下や肘の内側、股の付け根といった、皮膚がこすれやすい部分に強く現れる傾向があります。触ると、紙やすりのようなザラザラとした感触があるのも特徴です。また、発疹が消えた後、一週間から二週間ほど経つと、指先から日焼けの後のように皮がむけてくる「膜様落屑(まくようらくせつ)」が見られます。治療法は、通常の溶連菌感染症と全く同じです。原因は細菌であるため、ペニシリン系などの抗生物質を、十日間ほど確実に飲みきることが必要です。これを怠ると、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった、深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。つまり、猩紅熱とは、「発疹を伴う、少し派手な溶連菌感染症」と理解しておけば良いでしょう。症状が派手な分、診断はつきやすいですが、治療の重要性は変わりません。

  • カンジダ膣炎とプール、妊婦が知っておくべき関係

    知識

    妊娠中は、ホルモンバランスの変化や免疫力の変動により、多くの女性が「カンジダ膣炎」にかかりやすくなります。おりものの増加やかゆみといった不快な症状に悩まされている時に、「プールに入っても大丈夫だろうか」「症状が悪化したり、他の人にうつしたりしないだろうか」と心配になるのは当然のことです。カンジダ膣炎は、カンジダという真菌(カビの一種)が、膣内で異常増殖することで起こる病気です。このカンジダ菌は、もともと多くの人の皮膚や粘膜に存在する常在菌であり、プールに入ったからといって、新たに感染することはほとんどありません。また、プールの水に含まれる塩素によって、カンジダ菌が他の人に感染する可能性も極めて低いと考えられています。つまり、「プールに入ることでカンジダ膣炎になる」あるいは「他の人にカンジダをうつす」という心配は、基本的には不要です。しかし、問題となるのは、すでにカンジダ膣炎を発症している、あるいはその症状がある場合に、プールに入ることの影響です。まず、プールの水に含まれる「塩素」が、デリケートになっている外陰部や膣の粘膜を刺激し、かゆみやヒリヒリ感といった症状を悪化させてしまう可能性があります。また、濡れた水着を長時間着用していると、デリケートゾーンが高温多湿の状態になります。これは、カンジダ菌がさらに増殖するのに最適な環境であり、症状を長引かせる原因となり得ます。したがって、もし、かゆみやおりものの異常といったカンジダ膣炎を疑う症状がある場合は、まず「産婦人科」を受診し、適切な治療を受けることを優先すべきです。治療によって症状が完全に治まってから、医師の許可を得てプールに入るのが最も安全な手順です。もし、軽い症状でプールに入る場合でも、プールから上がったらすぐにシャワーでよく洗い流し、濡れた水着は速やかに着替えて、デリケートゾーンを清潔で乾燥した状態に保つことを徹底しましょう。自分の体の状態を正しく把握し、無理をしないことが、楽しいマタニティライフを送るための秘訣です。

  • いちご舌に発疹が伴う時、考えられる病気とは

    医療

    舌がイチゴのように赤くブツブツになり、同時に、体にも赤い発疹が広がっている。この二つの症状がセットで現れた時、それは体の中で何らかの全身的な反応が起きているサインであり、医師はいくつかの代表的な感染症を念頭に置いて診察を進めます。まず、最も頻度が高いのが「溶連菌感染症」です。溶連菌は、喉の痛みや発熱を引き起こす細菌ですが、一部の菌株は「発赤毒(ほっせきどく)」という毒素を産生します。この毒素が血液に乗って全身に広がることで、皮膚に細かい点状の赤い発疹が現れるのです。発疹は、首や胸、脇の下、股のあたりから始まり、やがて全身に広がります。触ると、紙やすりのようにザラザラしているのが特徴です。この、溶連菌感染症に特徴的な発疹を伴う病型を、特に「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼びます。猩紅熱も、通常の溶連菌感染症と同様に、抗生物質による治療が不可欠です。次に、前述の通り、常に鑑別診断として重要なのが「川崎病」です。川崎病でも、高熱やいちご舌と共に、体に不定形な発疹が現れます。溶連菌感染症の発疹が細かい点状であるのに対し、川崎病の発疹は、麻疹様であったり、風疹様であったりと、様々な形をとります。また、溶連菌感染症であれば、抗生物質を飲み始めると速やかに解熱しますが、川崎病の場合は、抗生物質は全く効かず、高熱が持続します。この治療への反応性の違いも、二つの病気を見分ける上で重要なポイントとなります。さらに、ウイルス感染症でも、いちご舌に似た舌の変化と発疹が見られることがあります。例えば、「手足口病」でも、口の中に発疹が多発し、舌が赤く見えることがあります。また、稀なケースとして、ブドウ球菌などが産生する毒素によって引き起こされる「毒素性ショック症候群(TSS)」でも、高熱や血圧低下と共に、いちご舌や全身の発疹が見られることがあります。これは極めて重篤な状態です。このように、いちご舌と発疹という組み合わせは、様々な病気の可能性を示唆します。自己判断は非常に危険ですので、必ず小児科医の診察を受け、正確な診断に基づいた治療を開始してください。

  • 私がふわふわめまいで病院を転々とした話

    生活

    三十代も半ばを過ぎた頃から、私の体には奇妙な不調が現れ始めました。それは、はっきりとした回転性のめまいではないのですが、常に体が左右にゆらゆらと揺れているような、あるいは、柔らかい地面の上を歩いているような、ふわふわとした感覚でした。特に、パソコン作業に集中した後や、人混みの中を歩いている時に、その症状はひどくなりました。最初に私が訪れたのは、会社の近くにある「耳鼻咽痕科」でした。めまいと言えば、まず耳だろうと思ったからです。様々な検査を受けましたが、医師から告げられたのは「耳の平衡機能には、特に異常は見当たりませんね」という言葉でした。次に私が向かったのは、少し大きな病院の「脳神経外科」です。もしかしたら、脳に何か問題があるのではないか、という不安があったからです。MRI検査を受け、緊張しながら結果を聞きましたが、これもまた「脳に異常はありません。心配ないですよ」とのこと。安心した反面、「では、この不快な症状の原因は一体何なのだろう」という、先の見えない不安は募るばかりでした。その後も、私は「整形外科」(首こりが原因かと思ったから)や、「循環器内科」(血圧の問題かと思ったから)など、いくつかの病院を転々としました。しかし、どこへ行っても結果は同じ。「異常なし」。まるで、ドクターショッピングをしているかのような状態に、私は心身ともに疲れ果てていました。そんな時、知人から「もしかしたら、自律神経の問題じゃない?」と、何気なく言われました。そして、勧められたのが「心療内科」でした。正直、精神的な問題だとは思いたくありませんでしたが、藁にもすがる思いで受診することにしました。心療内科の医師は、私のこれまでの経緯や、仕事のストレス、生活習慣について、一時間以上もかけてじっくりと話を聞いてくれました。そして、「あなたの症状は、典型的な自律神経失調症によるものです。体は正直ですから、ストレスが限界に達すると、めまいという形でサインを送ってくるんですよ」と、優しく説明してくれたのです。その瞬間、私は、長年の謎が解けたような気がして、思わず涙がこぼれました。病名がつき、原因がわかったこと。それが、何よりの薬でした。そこから、生活習慣の改善と、漢方薬による治療を始め、私のふわふわめまいは、少しずつ、しかし確実に改善へと向かっていったのです。

  • なぜ思春期に多い?起立性調節障害のメカニズム

    医療

    起立性調節障害(OD)は、小学生高学年から高校生にかけての「思春期」に発症のピークを迎えます。なぜ、この特定の時期に、子供たちは朝起きられなくなってしまうのでしょうか。その背景には、この時期特有の、急激な身体的成長と、それをコントロールする自律神経の発達との間に生じる「アンバランス」が、深く関わっています。思春期は、第二次性徴によって、身長が一年で十センチ以上も伸びるなど、体が爆発的に成長する時期です。骨格や筋肉が急速に大きくなる一方で、心臓や血管、そして体の機能を自動的に調整する自律神経系の発達は、それよりも少し遅れて、ゆっくりと成熟していきます。この「体の器」の急成長に、「中身のシステム(自律神経)」の発達が追いつかない、というギャップが生じてしまうのです。具体的には、何が起こるのでしょうか。私たちが、寝ている状態から立ち上がると、重力によって血液は下半身に移動しようとします。健康な人であれば、自律神経(交感神経)が瞬時に働き、下半身の血管を収縮させて、血液が下がるのを防ぎ、心臓のポンプ機能を強めて、脳へと十分な血液を送り続けます。しかし、ODの子供たちは、この自律神経のスイッチがうまく機能しません。立ち上がっても、下半身の血管が十分に収縮せず、脳への血流が一時的に低下してしまうのです。その結果、脳が酸欠状態となり、立ちくらみやめまい、頭痛、倦怠感といった、様々な症状が引き起こされます。特に、睡眠中は副交感神経が優位なリラックスモードになっているため、朝、目覚めて起き上がるタイミングで、活動モードの交感神経へとスムーズに切り替えることが最も苦手です。これが、朝に症状が集中し、午後になると回復してくる理由です。また、思春期は、受験や友人関係、親子関係など、精神的なストレスが非常に大きい時期でもあります。ストレスは、自律神経のバランスを直接的に乱す大きな要因となるため、身体的なアンバランスに心理的なストレスが加わることで、症状が発症・悪化しやすくなるのです。つまり、ODは、急激な成長という嵐の中を航海する、思春期の体が発する、仕方のない悲鳴とも言えるのです。

  • マタニティスイミング、始める前に確認すべきこと

    知識

    妊娠中の運動不足解消や、体重管理、リフレッシュのために、「マタニティスイミング」を始めたいと考えている妊婦さんは多いでしょう。水中では浮力によって体への負担が軽減され、全身運動ができるため、マタニティスイミングは妊婦にとって非常にメリットの多い運動です。しかし、誰でも、いつでも始められるわけではありません。安全に楽しむためには、始める前に必ず確認しておくべきいくつかの重要なポイントがあります。まず、最も重要なのが、「かかりつけの産婦人科医の許可を得る」ことです。これは、絶対的な必須条件です。妊娠の経過は一人ひとり全く異なります。切迫早産や前期破水のリスク、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、あるいは何らかの感染症など、運動が禁忌となる状態である可能性もあります。自己判断で始めるのは絶対にやめましょう。通常、安定期に入り、妊娠経過が順調であれば許可が出ることが多いですが、必ず医師によるメディカルチェックを受け、「マタニティスイミング参加許可証」のような書類にサインをもらってから、スイミングスクールに提出する必要があります。次に、参加する「施設選び」です。必ず「マタニティスイミング」の専門コースが設置されており、専門の知識を持ったインストラクターが指導してくれる施設を選びましょう。一般のプール利用とは異なり、妊婦の体に配慮したプログラムが組まれており、緊急時の対応マニュアルなども整備されているため、安心して参加できます。施設の衛生管理が徹底されているかどうかも、感染症予防の観点から重要なチェックポイントです。そして、始める「タイミング」です。一般的には、つわりが落ち着き、胎盤が完成して流産のリスクが低くなる「安定期(妊娠十六週以降)」から始めるのが良いとされています。妊娠後期になると、お腹が大きくなって動きにくくなったり、早産のリスクが高まったりするため、遅くとも三十二週頃までには始めるのが良いでしょう。体調が良い日を選んで参加し、少しでもお腹の張りや疲れを感じたら、無理せずすぐに中断し、休む勇気を持つことも大切です。これらのルールを守ることが、お腹の赤ちゃんと自分自身の安全を守り、マタニティスイミングの効果を最大限に引き出すことに繋がるのです。

  • 【症状別ガイド】めまい、動悸、頭痛、何科から始める?

    医療

    自律神経失調症の症状は、実に多岐にわたります。「全身倦怠感」という漠然としたものから、特定の臓器に現れるはっきりとした症状まで様々です。そして、特定の症状が強く出ている場合、いきなり心療内科へ行くよりも、まずはその症状に対応する専門科で「重大な身体的疾患がないこと」を確認(除外診断)する方が、結果的に安心して治療に専念できることがあります。ここでは、代表的な症状別に、最初に相談すべき診療科の目安をご紹介します。めまい(特に、ぐるぐる回る回転性めまい)まず受診すべきは「耳鼻咽喉科」です。めまいの多くは、平衡感覚を司る内耳のトラブル(良性発作性頭位めまい症、メニエール病など)が原因です。耳鼻咽喉科で耳に異常がないことを確認することが第一歩です。動悸、息切れ、胸の圧迫感まず受診すべきは「循環器内科」です。狭心症や不整脈など、心臓の病気が隠れていないかを、心電図や心エコー検査で調べてもらう必要があります。命に関わる可能性もあるため、最優先で確認すべき項目です。頭痛(特に、これまで経験したことのない激しい頭痛)まず受診すべきは「脳神経外科」または「神経内科」です。くも膜下出血や脳腫瘍といった、緊急性の高い脳の病気でないことを確認するため、CTやMRI検査が必要になる場合があります。胃の痛み、吐き気、下痢や便秘の繰り返しまず受診すべきは「消化器内科」です。胃潰瘍や逆流性食道炎、あるいは炎症性腸疾患などの可能性がないか、内視鏡検査などで調べます。過敏性腸症候群なども、自律神経の乱れと深く関わっています。これらの専門科で検査を受け、「器質的な異常は見つからない」と診断された上で、それでも症状が続く場合。その時に初めて、その不調の真の原因が「自律神経の乱れ」にある可能性が非常に高まり、満を持して「心療内科」の扉を叩く、という流れになります。この「まず、命に関わる病気を除外する」というステップを踏むことが、遠回りのように見えて、実は最も安全で確実な道筋なのです。