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2025年7月
  • 持病を持つ高校生、小児科と内科の連携が鍵

    医療

    気管支喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、てんかん、発達障害、あるいは先天性の心疾患や腎疾患。子供の頃に発症し、物心ついた時からずっと小児科の専門医と共に歩んできた、慢性疾患を持つ高校生たち。彼らにとって、「小児科を卒業し、内科へ移行する」という問題は、単なる病院の変更ではなく、人生の大きな転換点であり、時に大きな不安を伴うものです。こうした子供たちの医療を、小児期から成人期へ、途切れることなくスムーズに引き継いでいくための取り組みを、「移行期医療(トランション)」と呼びます。そして、この成功の鍵を握るのが、「小児科医」と「成人診療科の医師」との密接な連携です。小児科医は、その子の病気が、成長や発達にどのような影響を与えてきたか、そして、本人の性格や家族のサポート体制まで含めて、長年にわたる全ての情報を把握しています。一方、成人診療科の医師(内科医、循環器内科医など)は、加齢に伴う合併症や、妊娠・出産、就労といった、成人期特有の問題に対応する専門家です。この二つの専門性が、うまくバトンタッチされなければ、患者さんは適切な医療を受けられなくなってしまう危険性があります。例えば、小児喘息の患者さんが、自己判断で突然内科に移った場合、新しい医師は、これまでの発作の頻度や、有効だった薬の種類などを一から把握しなければならず、最適な治療を提供するまでに時間がかかってしまうかもしれません。理想的な移行期医療では、まず、小児科の主治医が、患者さんが高校生くらいになった段階で、本人と家族に、成人医療への移行の必要性について説明を始めます。そして、患者さんの病状や居住地などを考慮して、最適な引き継ぎ先となる成人診療科の医師を探し、紹介します。その際には、これまでの詳細な治療経過をまとめた「診療情報提供書(紹介状)」を作成し、両科の医師が情報を共有します。場合によっては、しばらくの間、小児科と成人診療科の両方を並行して受診する期間を設けることもあります。持病を持つ高校生にとって、かかりつけの小児科医は、単なる医師ではなく、成長を見守ってくれた人生の伴走者のような存在です。その伴走者とよく相談しながら、焦らず、計画的に、次のステージへと進んでいくことが何よりも大切なのです。

  • 溶連菌検査が陰性なのに、いちご舌が治らない

    医療

    小児科で「溶連菌かもしれない」と言われ、迅速検査を受けたけれど、結果は陰性。処方された風邪薬を飲んでいるのに、一向にいちご舌が治らない。そんな時、親御さんは「診断が間違っているのではないか」「何か他の悪い病気なのではないか」と、大きな不安を感じることでしょう。溶連菌検査が陰性であったにもかかわらず、いちご舌が続く場合、いくつかの可能性を考える必要があります。まず、最も考えられるのが、「溶連菌検査の偽陰性」です。迅速検査は、その場で結果がわかる非常に便利な検査ですが、その精度は100%ではありません。検査を行うタイミング(発症直後すぎるなど)や、喉の菌の採取がうまくいかなかった場合などに、本当は感染しているのに陰性と出てしまう「偽陰性」が、一定の確率で起こり得ます。もし、臨床症状(高熱、喉の所見など)から、医師が強く溶連菌感染症を疑う場合は、迅速検査が陰性であっても、より精度の高い「咽頭培養検査」を追加で行ったり、臨床診断に基づいて抗生物質の治療を開始したりすることがあります。次に、考慮すべきなのが、やはり「川崎病」の可能性です。川崎病の初期は、溶連菌感染症と症状が非常に似ているため、鑑別が難しいことがあります。溶連菌検査が陰性で、かつ、抗生物質が効かずに高熱が続き、目の充血や発疹など、他の川崎病の症状が徐々に現れてくる場合は、この病気の可能性を再度検討し、専門的な治療ができる医療機関へ紹介されることになります。また、他のウイルス感染症が原因である可能性もあります。アデノウイルスやEBウイルスなど、一部のウイルス感染症でも、喉が真っ赤になり、舌にブツブツとした変化が見られることがあります。これらのウイルスには特効薬はなく、対症療法で自然に回復するのを待つことになります。いずれにせよ、検査結果が陰性であったからといって、安心してしまうのは早計です。症状が改善しない、あるいは悪化していく場合は、必ず再度、医師の診察を受けてください。経過を注意深く観察し、診断を見直していくことが、本当の原因を見つけ出すための重要なプロセスなのです。

  • 喉の酷使と乾燥、赤みを招く生活習慣

    生活

    熱もないし、特に病気というわけでもなさそうなのに、気づくといつも喉が赤い。そんな方は、ご自身の日常生活の中に、喉に負担をかける習慣が隠れているのかもしれません。喉の粘膜は非常にデリケートなため、日々の些細な習慣の積み重ねが、慢性的な炎症と赤みを引き起こすことがあります。まず、代表的なのが「喉の酷使」です。教師やコールセンターのオペレーターなど、仕事で長時間話し続ける人はもちろん、カラオケが趣味の人、あるいは普段から声が大きい人も、知らず知らずのうちに声帯や喉の粘膜に大きな負担をかけています。過度な振動や摩擦によって、粘膜が炎症を起こし、常に赤い状態になってしまうのです。意識的に声のトーンを抑えたり、こまめに休憩をとって喉を休ませたり、会話の合間に水分補給をしたりといった工夫が必要です。次に、現代人にとって大きな問題となっているのが「乾燥」です。冬場の乾いた空気はもちろん、夏場でもエアコンが効いた室内は、湿度が非常に低くなっています。乾燥した環境に長時間いると、喉の粘膜から水分が奪われ、粘膜を覆ってウイルスなどの侵入を防いでいる粘液のバリア機能が低下します。これにより、喉は無防備な状態となり、わずかな刺激でも炎症を起こしやすくなってしまうのです。加湿器を使用したり、濡れタオルを干したりして、室内の湿度を五十~六十パーセントに保つことが理想です。マスクの着用も、自分の呼気に含まれる湿気で喉を潤す効果があり、非常に有効です。また、「食生活」も大きく影響します。唐辛子などの香辛料を多く使った刺激の強い食べ物や、熱すぎる飲み物は、喉の粘膜を直接傷つけ、炎症の原因となります。アルコール、特に度数の高いお酒は、粘膜を脱水させ、さらに炎症を悪化させます。喫煙は、言うまでもなく最悪です。タバコの煙に含まれる数千もの有害物質が、喉の粘膜を慢性的に刺激し続け、赤みだけでなく、がんのリスクさえも高めます。もし、あなたの喉が常に赤いのであれば、それは体が発する生活習慣への警告サインかもしれません。大声を控える、喉を潤す、刺激物を避ける、禁煙する。これらの地道な改善が、健やかな喉を取り戻すための第一歩となります。

  • 膝の痛みでやってはいけないこと、悪化させるNG行動

    知識

    膝に痛みを感じている時、良かれと思ってやっているその行動が、実は症状をさらに悪化させる原因になっているかもしれません。痛みを長引かせず、スムーズな回復を目指すためには、膝に負担をかけるNG行動を避けることが非常に重要です。まず、最もやってはいけないのが「痛みを我慢して、これまで通りに運動や仕事を続ける」ことです。痛みは、体からの「それ以上、負担をかけないで」という危険信号です。このサインを無視して無理を続けると、膝関節の炎症がひどくなり、軟骨のすり減りを加速させてしまいます。特に、ジャンプや急な方向転換を伴うスポーツ、重い荷物を持つ作業などは、痛みが治まるまで完全に中止すべきです。次に、意外と知られていないのが「急に激しい筋力トレーニングを始める」ことの危険性です。膝の痛みの原因の一つに筋力低下があるため、「膝を鍛えなければ」と焦って、自己流でスクワットなどを始める人がいますが、これは逆効果になることがあります。正しいフォームで行わないと、かえって膝関節に過剰な負担をかけてしまい、痛みを悪化させるだけです。筋力トレーニングは、必ず医師や理学療法士の指導のもと、膝に負担の少ない運動から、段階的に始めるようにしましょう。また、「正座やあぐら、横座り」といった、膝を深く曲げたり、ねじったりする床での生活習慣も、膝にとっては大きな負担となります。できるだけ椅子やベッドを使った洋式の生活に切り替えることをお勧めします。肥満も、膝への負担を増大させる大きな要因です。膝の痛みは、体重が1キロ増えるだけで、歩行時にはその三倍、つまり3キロ分の負荷が増すと言われています。痛みがあるからといって動かずにいると、体重が増え、さらに膝が痛くなるという悪循環に陥ってしまいます。食事内容を見直し、適切な体重管理を心がけることも、重要な治療の一環です。そして、何よりも最大のNG行動は、「原因がわからないまま、自己判断で放置する」ことです。膝の痛みの裏には、様々な病気が隠れている可能性があります。痛みが続く場合は、必ず整形外科を受診し、専門家による正しい診断と指導を受けるようにしてください。

  • 私が変形性膝関節症と診断され、治療を始めるまで

    医療

    五十歳を過ぎた頃から、なんとなく感じていた膝の違和感。それが、明確な「痛み」に変わったのは、ある朝、駅の階段を駆け下りようとした時でした。右膝の内側に、ズキンと電気が走るような鋭い痛みが走り、思わず手すりに掴まってしまいました。それ以来、立ち上がる時、歩き始める時、そして階段の上り下りといった、何気ない動作のたびに、膝の痛みが私を悩ませるようになりました。最初は、「年のせいだろう」「少し休めば治るだろう」と、ドラッグストアで買った湿布を貼ってごまかしていました。しかし、痛みは一向に改善せず、むしろ、膝が少し腫れて、正座ができないほど曲げにくくなっていることに気づきました。このままではいけない。そう思い、私は意を決して、近所の整形外科クリニックの扉を叩きました。診察室に入ると、医師は私の話をじっくりと聞き、膝を色々な方向に動かしたり、押したりして、痛みの場所や可動域を丁寧に確認しました。そして、「レントゲンを撮ってみましょう」ということになりました。レントゲン室で数枚の写真を撮り、再び診察室へ。医師は、モニターに映し出された私の膝のレントゲン写真を見せながら、こう説明しました。「膝の内側の、骨と骨の間の隙間が、少し狭くなっているのがわかりますか。これは、クッションの役割をしている軟骨がすり減ってきているサインです。典型的な『変形性膝関節症』の初期段階ですね」。初めて聞く病名に、私はショックを受けました。もう、元のように歩けなくなるのではないか。そんな不安が頭をよぎりました。しかし、医師は穏やかな口調で続けました。「大丈夫ですよ。初期の段階ですから、今からきちんと治療とセルフケアを始めれば、進行を遅らせ、痛みなく生活することは十分可能です」。その日、私は炎症を抑えるための湿布と、痛みが強い時のための飲み薬を処方されました。そして、治療の柱となる「ヒアルロン酸の関節内注射」を初めて受けました。さらに、理学療法士さんからは、膝周りの筋力を鍛えるための簡単な運動や、日常生活での注意点について、丁寧な指導を受けました。病名がわかり、治療方針が示されたことで、私の漠然とした不安は、「これから頑張ろう」という前向きな気持ちに変わっていきました。あの日、勇気を出して病院へ行って、本当によかったと思っています。