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2025年7月
  • 上の子からうつる?妊婦と子供のプールでの注意点

    生活

    妊娠中に、上の小さなお子さんと一緒に市民プールやレジャープールへ行く。これは、夏の楽しい家族の思い出となる一方で、妊婦さんにとっては、感染症のリスクと隣り合わせの状況でもあります。特に、保育園や幼稚園といった集団生活を送っている子供は、様々な感染症の「運び屋」となりやすく、そこから妊婦さんへとうつってしまうケースは少なくありません。上の子と一緒のプールで、妊婦さんが特に注意すべき感染症は、いわゆる「三大夏風邪」と呼ばれる「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」です。これらの病気は、子供がかかると比較的軽症で済むことが多いですが、免疫のない大人がかかると、高熱や激しい痛みで重症化し、妊娠中の体に大きな負担をかけることになります。これらのウイルスは、感染した子供の咳やくしゃみなどの飛沫、あるいは便の中に排出されます。プールサイドで子供が咳をしたり、水中でお尻を洗ったり、トイレの後に手洗いが不十分だったりすると、ウイルスが環境中に広がり、それを妊婦さんが知らず知らずのうちに口や鼻から取り込んでしまうのです。感染を防ぐためには、まず、お子さんの体調をよく観察することが第一です。少しでも熱があったり、機嫌が悪かったり、発疹が出ているような場合は、プールに行くのを見合わせる勇気も必要です。プールでは、お子さんから目を離さず、他の子供との過度な接触や、おもちゃの貸し借りにも注意しましょう。そして、最も重要なのが、プールから上がった後のケアです。まず、親子共にシャワーで全身をしっかりと洗い流します。目も軽く洗浄しましょう。トイレの後や、何かを食べる前には、必ず石鹸で丁寧に手洗いをする(させる)ことを徹底してください。また、水分補給の際には、ペットボトルや水筒の回し飲みは避けましょう。さらに、妊婦さん自身の免疫力を落とさないことも大切です。人混みでの長時間の滞在は避け、疲れを感じたら、日陰で十分に休息をとるようにしましょう。家族の楽しい時間を守るためにも、感染症に対する正しい知識と、少しの慎重さを持つことが、何よりの予防策となります。

  • 熱はないのに喉が赤い、考えられる原因とは?

    医療

    鏡で口の中を覗いてみたら、喉の奥が真っ赤になっている。でも、熱はないし、体もだるくない。そんな経験はありませんか。発熱を伴わない喉の赤みは、多くの人が経験する症状ですが、その背景には様々な原因が隠されています。単なる軽い炎症から、注意が必要な病気のサインまで、可能性を知っておくことが大切です。まず、最も一般的な原因が「ごく初期の風邪」です。本格的な風邪の症状(発熱、鼻水、咳など)が現れる前段階として、ウイルスが最初に付着する喉の粘膜で、軽い炎症が起きている状態です。この段階で、十分な休息と栄養、うがいなどを心がけることで、本格的な発症を防げることもあります。次に考えられるのが、「物理的な刺激や環境要因」です。例えば、カラオケで歌いすぎたり、大声で応援したりして喉を酷使した場合、声帯だけでなく咽頭の粘膜も炎症を起こして赤くなります。また、空気が乾燥している冬場や、エアコンの効いた部屋に長時間いると、喉の粘膜が乾燥し、防御機能が低下して赤みが出やすくなります。辛いものや熱いものの食べ過ぎ、飲酒、喫煙なども、喉の粘膜を直接刺激し、赤みを引き起こす大きな原因です。さらに、見逃されがちなのが「逆流性食道炎」です。寝ている間などに、胃酸が食道を通って喉まで逆流してくることで、喉の粘膜が胃酸によって焼かれ、慢性的な炎症を起こして赤くなります。喉のヒリヒリ感や、咳払い、声がれ、胸やけといった症状を伴うことが多いのが特徴です。また、「アレルギー反応」によって喉が赤くなることもあります。花粉やハウスダストなどが喉の粘膜に付着し、アレルギー性の炎症を引き起こすのです。鼻水や目のかゆみといった他のアレルギー症状があれば、その可能性が高いでしょう。このように、熱がない喉の赤みは、一過性の刺激から、生活習慣に起因するもの、あるいは消化器やアレルギーの病気まで、その原因は多岐にわたります。赤みが数日たっても引かない、あるいは他の症状が出てきた場合は、専門医に相談することが大切です。

  • ぐるぐる回るめまいと、ふわふわするめまいの違い

    知識

    めまいと一言で言っても、その感じ方には大きく分けて二つのタイプがあり、それぞれ原因となる病気や受診すべき診療科が異なります。ご自身のめまいがどちらのタイプなのかを正しく認識することが、適切な医療に繋がるための重要な第一歩です。まず、一つ目のタイプが「回転性めまい」です。これは、自分自身か、あるいは天井や壁といった周囲の景色が、ぐるぐると高速で回転しているように感じる、非常に激しいめまいです。多くの場合、吐き気や嘔吐、冷や汗などを伴い、立っていることさえ困難になります。この回転性めまいの原因のほとんどは、体の平衡感覚を司る「内耳(三半規管や耳石器)」の異常にあります。代表的な病気には、寝返りや起き上がりなど、頭の位置を変えた時に数秒から数十秒の激しいめまいが起きる「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」や、難聴や耳鳴りを伴って数時間続くめまい発作を繰り返す「メニエール病」、風邪の後などに突然発症し、数日間にわたって激しいめまいが続く「前庭神経炎」などがあります。これらの病気は、いずれも「耳鼻咽喉科」が専門の診療科となります。一方、二つ目のタイプが「浮動性(ふどうせい)めまい」、すなわち「ふわふわするめまい」です。これは、体が雲の上を歩いているようにふわふわしたり、船に揺られているようにふらふらしたり、地に足がついていないような不安定感として感じられます。回転性めまいのような激しさはありませんが、常にすっきりしない状態が長く続くため、日常生活に大きな影響を及ぼします。このふわふわするめまいの原因は非常に多岐にわたります。上記の耳の病気の回復期に見られることもありますが、それ以外に、脳梗塞や脳腫瘍といった「脳の病気」、高血圧や不整脈などの「循環器系の病気」、ストレスや過労による「自律神経の乱れ」、あるいは薬の副作用など、様々な可能性が考えられます。そのため、原因の特定が難しく、耳鼻咽喉科、脳神経外科、循環器内科、心療内科など、複数の診療科の診察が必要になることも少なくありません。まずは、ご自身のめまいのタイプを医師に正確に伝えることが、診断の重要な手がかりとなるのです。

  • ふわふわするめまい、最初に受診すべきは何科か

    医療

    自分自身が、あるいは周りの景色が、ぐるぐると回転するわけではない。けれど、まるで雲の上を歩いているかのように、体がふわふわと浮いているような感覚。あるいは、船に揺られているような、地に足がついていないような、不安定な感じ。この、多くの人が経験する「ふわふわするめまい(浮動性めまい)」は、その原因が多岐にわたるため、「一体、何科を受診すれば良いのだろう?」と悩んでしまう、非常に厄介な症状です。この問いに対する最初のステップとして、まず受診を検討すべき診療科は「耳鼻咽喉科」です。なぜなら、めまいの原因として最も頻度が高いのは、体のバランスを司る三半規管や耳石器といった「内耳(ないじ)」のトラブルだからです。耳鼻咽喉科医は、めまいの専門家です。特殊な眼鏡(フレンツェル眼鏡)をかけて眼球の動き(眼振)を観察したり、体の平衡機能を調べる検査を行ったりすることで、めまいの原因が耳から来ているものなのか、あるいは他の場所にあるのかを高い精度で鑑別することができます。良性発作性頭位めまい症(BPPV)やメニエール病といった、耳が原因のめまいの多くは、耳鼻咽喉科での専門的な治療によって改善が期待できます。しかし、ふわふわするめまいの場合、耳に異常が見つからないケースも少なくありません。その場合、次に考えられるのが「脳」の問題です。ろれつが回らない、手足がしびれるといった神経症状を伴う場合は、脳梗塞や脳腫瘍などの危険な病気の可能性も否定できないため、一刻も早く「脳神経外科」や「神経内科」を受診する必要があります。また、こうした明らかな神経症状がなく、ふわふわ感が続く場合は、「自律神経の乱れ」が原因であることも非常に多いです。この場合は、「心療内科」や「精神科」が専門となります。このように、ふわふわするめまいは原因が複雑なため、最終的に複数の科の協力が必要になることもあります。しかし、まずは最も可能性の高い耳の病気を除外するという意味で、「耳鼻咽喉科」を最初の相談窓口とすることが、的確な診断への最も合理的で安心なスタートラインと言えるのです。

  • 温泉や銭湯はOK?プールとの衛生基準の違い

    知識

    妊娠中のリフレッシュとして、温泉や銭湯にゆっくり浸かりたい、と考える方も多いでしょう。では、プールと温泉・銭湯では、感染症のリスクに違いはあるのでしょうか。衛生管理の観点から、その違いを理解しておきましょう。まず、日本の公衆浴場(温泉、銭湯)やプールは、それぞれ「公衆浴場法」および「学校保健安全法」などに基づいて、水質や衛生管理に関する厳しい基準が定められています。どちらの施設も、衛生的な環境が保たれるよう、水中の塩素濃度や、大腸菌群などの細菌検査が定期的に行われています。したがって、適切に管理されている施設であれば、水そのものから重篤な感染症にかかるリスクは、プールでも温泉でも、極めて低いと言えます。しかし、両者にはいくつかの違いがあります。まず、「塩素濃度」です。プールは、不特定多数の人が利用し、水中で運動することから、感染症予防のために、比較的高い濃度の塩素で消毒されています(遊離残留塩素濃度0.4mg/L以上)。一方、温泉は、その泉質(効能)を保つため、循環式の場合でも塩素消毒の基準はプールより緩やかであったり、源泉かけ流しの場合には塩素消毒が行われなかったりすることもあります。このため、一部の細菌に対する殺菌力は、プールの方が高いと言えるかもしれません。次に注意すべきなのが「レジオネラ菌」のリスクです。レジオネラ菌は、循環式の浴槽や、ジャグジー、打たせ湯などの、エアロゾル(水の霧)が発生しやすい環境で繁殖しやすく、それを吸い込むことで「レジオネラ肺炎」という重篤な肺炎を引き起こすことがあります。妊婦は免疫力が変化しているため、一般の人よりも注意が必要です。衛生管理が徹底されている施設を選ぶことが大前提となります。一方で、プールで注意が必要なアデノウイルスなどによる「プール熱」は、温泉や銭湯ではあまり問題になりません。結論として、プールも温泉・銭湯も、衛生管理された施設を適切に利用する限り、大きなリスクはありません。しかし、カンジダ膣炎の悪化を招きやすい塩素刺激や、レジオネラ菌のリスクなど、それぞれに特有の注意点が存在します。どちらを利用する場合でも、長時間の利用は避け、体調が良い時に限定し、必ず事前にかかりつけ医の許可を得ること。これが、妊娠中の入浴・遊泳における、最も重要な共通ルールです。

  • 起立性調節障害の治療、病院では何をするのか

    医療

    起立性調節障害(OD)と診断された後、病院では具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。ODの治療は、単に薬を飲むだけでなく、日常生活の工夫や、環境調整、心理的なサポートといった、多角的なアプローチを組み合わせて、根気よく行っていくことが基本となります。治療の目標は、つらい症状を和らげ、子供が自信を取り戻し、年齢相応の社会生活(主に学校生活)を送れるようにサポートすることです。まず、治療の土台となるのが「非薬物療法」、すなわち生活指導です。医師は、ODがどのような病気であるかを、本人と家族に詳しく説明し、それが本人の「怠け」ではないことを理解してもらうことから始めます。そして、日常生活で実践できる、具体的な工夫を指導します。例えば、脳への血流を増やすために、「水分を一日一点五~二リットル、塩分を多めに(十~十二グラム程度)摂ること」。立ち上がる時は、頭を下げて、ゆっくりと時間をかけて起き上がること。日中、特に午前中は、横になっている時間をできるだけ減らし、座っているだけでも良いので体を起こしておくこと。そして、症状を悪化させないために、適度な運動(ウォーキングなど)で下半身の筋力をつけ、血流を改善すること、などです。次に、これらの非薬物療法だけでは症状の改善が不十分な場合に、「薬物療法」が検討されます。ODの治療で用いられる薬は、病気そのものを根治させるものではなく、つらい症状を緩和し、非薬物療法を続けやすくするための「補助輪」のような役割です。主に、立ち上がった時の血圧の低下を防ぎ、脳血流を維持するための昇圧剤(血圧を上げる薬)が処方されます。また、症状に応じて、頭痛薬や、自律神経のバランスを整える漢方薬などが用いられることもあります。さらに、学校生活への復帰をサポートするための「環境調整」も、重要な治療の一環です。医師は、学校の先生に病気について正しく理解してもらうための「診断書」を作成し、体育の見学や、試験時間の配慮、そして何よりも「遅刻しても登校を認めてもらう」といった、具体的な配慮をお願いしてくれます。これらの治療を組み合わせ、焦らず、子供のペースに合わせて進めていくことが、回復への最も確かな道となります。

  • 妊婦はプールに入っても大丈夫?感染症のリスクを正しく知る

    医療

    夏の暑い日、あるいはマタニティスイミングで体を動かしたい時、多くの妊婦さんが「プールに入っても、お腹の赤ちゃんに影響はないだろうか」「何か感染症にかかるリスクはないのだろうか」という疑問や不安を感じることでしょう。結論から言うと、健康な妊婦さんが、きちんと衛生管理されたプールを適切に利用するのであれば、過度に心配する必要はありません。しかし、いくつかのリスクと注意点を正しく理解しておくことが、安全に楽しむための大前提となります。まず、多くの妊婦さんが心配するのが、「膣から水が入って、細菌に感染し、赤ちゃんに影響が及ぶのではないか」ということでしょう。しかし、健康な妊娠状態であれば、子宮の入り口は子宮頸管粘液によって固く栓がされており、さらにその奥は卵膜によって守られているため、プール水が直接子宮内に侵入し、赤ちゃんに感染が及ぶという可能性は極めて低いと考えられています。プールの水は、法律で定められた基準に基づき、塩素によって適切に消毒されており、病原性のある細菌はほとんど存在しません。ただし、注意が必要なのは、プールサイドや更衣室、シャワー室といった、湿気が多く、人の往来が激しい場所です。これらの場所では、白癬菌(水虫の原因菌)や、ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)などに感染するリスクがあります。また、塩素濃度が低い、あるいは利用者が非常に多いプールでは、結膜炎(はやり目)の原因となるアデノウイルスや、咽頭結膜熱(プール熱)などに感染する可能性もゼロではありません。さらに、カンジダ膣炎などの性感染症を持っている場合、プールの塩素が刺激となって症状が悪化することもあります。このように、プールそのものの水質よりも、プールという環境に付随する様々な感染症のリスクが存在することを理解しておく必要があります。そして、最も重要なのは、プールに入る前に、必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、許可を得ることです。切迫早産や前期破水のリスクがある、あるいは何らかの感染症にかかっているなど、個々の状態によっては、プールに入ることが禁忌となる場合があります。医師の許可を得た上で、ルールを守って楽しむ。それが、妊婦さんのプール利用の鉄則です。

  • かかりつけ小児科医に高校生が診てもらうメリット

    医療

    「もう高校生なのに、小児科に行くのは恥ずかしい」。そう感じるお子さんもいるかもしれません。しかし、子供の頃からずっとお世話になっている「かかりつけの小児科医」に、高校生になっても引き続き診てもらうことには、実は大きなメリットがたくさんあります。それは、内科では得難い、継続的なケアに基づいた安心感です。最大のメリットは、医師がその子の「成長と発達の全過程」を把握していることです。生まれた時からの体重や身長の推移、受けた予防接種の全履歴、過去にかかった病気やアレルギーの有無、薬に対する反応など、その子の健康に関する膨大なデータが、カルテには記録されています。この長年にわたる情報があるからこそ、現在の症状が、その子の体質からくるものなのか、あるいは何か新しい異常が起きているのかを、より深く、的確に判断することができるのです。例えば、長引く咳一つをとっても、それが単なる風邪なのか、あるいは幼少期からの喘息の兆候が再び現れたのかを、過去のデータと照らし合わせながら見極めることができます。また、小児科医は、体の成長だけでなく、思春期という多感な時期の「心の発達」にも精通しています。起立性調節障害や、ストレスによる心身の不調など、この時期に特有の悩みに対しても、専門的な視点からアプローチしてくれます。小さな頃から知っている医師だからこそ、高校生本人も心を開きやすく、親には言えないような悩みを相談できる、というケースも少なくありません。さらに、子供の頃から続く慢性疾患(アレルギー、喘息、てんかん、発達障害など)を抱えている場合、その病気の専門家である小児科医の継続的なフォローは不可欠です。病状が安定しているからといって、突然、内科に移るのではなく、成人医療を専門とする医師へ、適切な情報提供と共にスムーズに引き継いでもらう「移行期医療(トランジション)」をサポートしてくれるのも、かかりつけ小児科医の重要な役割です。子供から大人へと変化していく大切な時期だからこそ、その子の全てを知る専門家がそばにいてくれる。これほど心強いことはないでしょう。

  • その症状、起立性調節障害かも?家庭でできるチェックリスト

    生活

    「うちの子、ただの怠け癖なんじゃないだろうか…」。朝、起きられないお子さんを前に、多くの親御さんがそう自問し、自分を責めてしまうことがあります。しかし、それは病気のサインかもしれません。起立性調節障害(OD)は、本人の気力ではどうにもならない、体の病気です。病院へ行くべきか迷った時に、家庭でできる簡単なチェックリストをご紹介します。以下の十一項目のうち、三つ以上当てはまる、あるいは二つでも症状が強く、日常生活に支障が出ている場合は、ODの可能性を考えて、専門医に相談することをお勧めします。立ちくらみ、あるいは、めまいを起こしやすい。立っていると気分が悪くなる、ひどいと失神する。入浴時や、嫌なことを見聞きした時に気分が悪くなる。動悸や息切れがしやすい。朝、なかなか起きられず、午前中は調子が悪い。顔色が青白い。食欲不振がある。お腹が痛くなることがよくある(腹痛)。乗り物酔いをしやすい。疲れやすい、倦怠感が強い。頭痛がする。特に、重要なのが「午前中に症状が強く、午後になると回復してくる」という、症状の日内変動です。ODの子供たちは、午後になると驚くほど元気になり、ゲームや友人との会話を楽しむことができます。この姿を見て、親は「なんだ、元気じゃないか。やっぱり怠けていただけだ」と誤解してしまいがちですが、これこそがODの典型的な特徴なのです。自律神経の働きには一日の中でリズムがあり、ODの子供たちは、午前中に交感神経のスイッチがうまく入らないため、血圧が上がらず、脳への血流が不足して、様々な不調が集中して現れるのです。このチェックリストは、あくまで家庭でできる目安です。正確な診断のためには、医療機関での検査が不可欠です。もし、お子さんのつらそうな様子に思い当たる節があれば、このリストを手に、勇気を出して小児科の扉を叩いてみてください。それは、お子さんを誤解から救い、正しい理解とサポートへの第一歩となります。

  • 小児科・心療内科・精神科、子供の不調に寄り添う科の選び方

    医療

    起立性調節障害(OD)は、自律神経という「体の問題」と、学校や友人関係のストレスといった「心の問題」が、鶏と卵のように複雑に絡み合って発症・悪化することが多い病気です。そのため、治療にあたっては、体の側面と心の側面、両方からのアプローチが不可欠となり、どの診療科を選ぶべきか、保護者の方は深く悩むことでしょう。「小児科」「心療内科」「精神科」、それぞれの役割の違いを理解し、お子さんの状態に合った科を選ぶことが大切です。まず、第一選択となるのは、やはり「小児科」です。特に、思春期の心身症に詳しい小児科医は、ODの診断と身体的な治療の専門家です。新起立試験による診断、血圧を上げる薬や漢方薬の処方、そして日常生活指導といった、身体面からのアプローチを行います。また、学校との連携(診断書の作成や、体育の見学、遅刻への配慮のお願いなど)についても、積極的にサポートしてくれます。まずは小児科で、身体的な基盤を整えることが治療のスタートラインです。次に、「心療内科」です。心療内科は、ストレスなどの心理的な要因が、体の症状として現れる「心身症」を専門とします。ODはまさに心身症の代表格です。身体的な治療だけでは改善が見られない場合や、不登校や不安感が強い場合に、心療内科の受診が勧められます。心療内科では、カウンセリングを通じて、お子さんが抱えているストレスの原因を探り、それに対処する方法(ストレスコーピング)を一緒に考えてくれます。必要に応じて、不安を和らげる薬が処方されることもあります。そして、「精神科(児童精神科)」です。精神科は、うつ病や不安障害といった、心の症状そのものが主となる病気を専門とします。もし、ODの症状に加えて、「死にたい」といった気持ちを口にする、自傷行為がある、幻覚や妄想が見られるといった、より深刻な精神症状が伴う場合は、精神科での専門的な治療が必要となります。実際には、これらの科の境界は曖昧で、小児科医がカウンセリングマインドを持って接してくれたり、心療内科と精神科が同じクリニック内で診療していたりすることも多いです。大切なのは、一つの科に固執せず、小児科をベースキャンプとしながら、必要に応じて他の専門家の力も借りていく、というチームアプローチの視点を持つことです。