熱はないのに、喉が慢性的に赤く、常にイガイガする。咳払いをしてもスッキリせず、声がかすれやすい。そんな症状に悩まされているなら、その原因は喉そのものではなく、実は「胃」にあるのかもしれません。近年、増加している「逆流性食道炎」は、こうした喉の不調の大きな原因の一つとして知られています。逆流性食道炎とは、胃の中で食物を消化するために分泌される強力な酸である「胃酸」が、食道へと逆流してしまう病気です。通常、胃と食道の間は、下部食道括約筋という筋肉によって、胃の内容物が逆流しないように固く閉ざされています。しかし、加齢や食生活の欧米化、肥満、ストレスなどによってこの筋肉の働きが弱まると、胃酸が食道へと漏れ出てしまうのです。食道の粘膜は、胃の粘膜と違って酸に対する防御機能が弱いため、逆流した胃酸によって炎症を起こし、びらん(ただれ)が生じます。これが、一般的に「胸やけ」や「呑酸(どんさん:酸っぱいものが上がってくる感じ)」として感じられる症状です。そして、この逆流がさらにひどくなると、胃酸は食道を通り越して、喉(咽頭・喉頭)まで達することがあります。喉の粘膜は、食道よりもさらにデリケートなため、強力な胃酸にさらされると、ひとたまりもありません。慢性的な炎症を起こし、常に赤く腫れた状態になってしまうのです。これが、「咽喉頭酸逆流症(いんこうとうさんぎゃくりゅうしょう)」とも呼ばれる状態で、熱はないのに喉が赤い、という症状の典型的な原因となります。この場合、喉の症状だけでなく、「長引く咳」「声がれ」「喉の詰まり感(ヒステリー球)」「飲み込みにくさ」といった、多彩な症状を伴うのが特徴です。特に、朝起きた時に症状が強い場合は、夜間に寝ている間に胃酸が逆流している可能性が高いと考えられます。もし、これらの症状に心当たりがある場合は、喉の治療だけをしても根本的な解決にはなりません。専門である「消化器内科」を受診し、胃酸の分泌を抑える薬による治療や、食生活の改善指導を受けることが、つらい喉の不調から解放されるための最も重要なアプローチとなります。
逆流性食道炎が招く、喉の赤みと違和感