あんなに小さかった我が子が、いつの間にか自分よりも背が高くなり、高校生になった。成長は嬉しいけれど、ふと体調を崩した時、「この子、まだ小児科でいいのかしら?」と、ふと立ち止まってしまう。そんな悩みを抱える保護者の方は、決して少なくありません。長年、親身に診てくれた、かかりつけの小児科の先生への信頼は厚い。でも、いつまでも親が付き添って小児科、というのもどうなのだろう。そんな保護者の皆さまへ、上手な移行のための考え方のヒントをお伝えします。まず、大前提として、保護者の方が「不安だから」という理由だけで、本人の気持ちを無視して小児科に縛り付けるのは避けましょう。高校生は、自立への一歩を踏み出す大切な時期です。自分の健康管理も、その自立の一部です。お子さんが「もう内科へ行きたい」「小児科は恥ずかしい」と感じているのであれば、その気持ちを尊重し、新しいかかりつけの内科医を一緒に探すというスタンスが重要です。一方で、子供の頃からの慢性疾患(喘息やアレルギーなど)で、専門的な治療を小児科で継続している場合は、話が別です。この場合は、自己判断で内科に移るのではなく、必ず小児科の主治医と相談してください。医師は、成人医療を専門とする後任の医師へ、これまでの治療経過をまとめた「紹介状」を用意し、責任を持って引き継いでくれます。これを「移行期医療(トランション)」と呼び、近年非常に重要視されています。保護者の役割は、このスムーズな橋渡しをサポートすることです。では、特に持病もなく、急性疾患で受診する場合、何を基準にすれば良いのでしょうか。一つの考え方は、「高校卒業」を一つの区切りとすることです。高校在学中は、まだ保護者の管理下にあることが多いですが、卒業後は、進学や就職で親元を離れる可能性もあります。その時に、自分で病院を探し、一人で受診できるよう、高校生のうちから、内科での受診を経験させておく、というのも一つの良い準備となります。大切なのは、この問題を「いつ小児科をやめるか」という視点だけでなく、「子供が将来、自立して医療と付き合っていくために、親として何ができるか」という視点で捉えること。そうすれば、おのずと進むべき道が見えてくるはずです。
わが子はまだ小児科?高校生の受診先に悩む保護者の方へ