高校生という時期は、第二次性徴による急激な体の変化と、受験や友人関係といった複雑な心理社会的ストレスが交錯する、人生の中でも特にデリケートな期間です。この時期に現れる体の不調は、原因が一つではなく、心と体が複雑に絡み合っていることが少なくありません。そのため、「この症状、一体何科に相談すればいいのだろう?」と、本人も家族も深く悩んでしまうことがあります。例えば、朝起きられない、立ち上がるとめまいや動悸がする、午前中は頭痛や倦怠感で全く動けない。これは、思春期に多い「起立性調節障害」の典型的な症状です。体の問題に見えますが、その背景には自律神経の乱れや、心理的なストレスが大きく関わっています。また、「原因不明の腹痛や下痢」「過呼吸」「頭痛」「食欲不振」といった症状も、学校でのストレスなどが引き金となる「心身症」として現れることがよくあります。このような、心と体の境界線上に現れる不調の場合、まず最初の相談窓口として、実は「小児科」が非常に重要な役割を果たします。多くの経験豊富な小児科医は、思春期に特有のこれらの心身の不調について、深い知識と理解を持っています。まず、血液検査や身体診察を通じて、貧血や甲状腺疾患、あるいは他の内科的な病気といった、「身体的な原因」がないかどうかを慎重に見極めてくれます。この「器質的疾患の除外」は、非常に重要なプロセスです。その上で、症状が心因的なものや、自律神経の乱れによるものと判断された場合、小児科医は、生活習慣の指導や、漢方薬などの処方を行うと共に、必要に応じて、より専門的な診療科へと繋いでくれます。例えば、うつ的な気分や強い不安が見られる場合は「精神科」や「児童精神科」へ。体の症状が前面に出ている心身症の場合は「心療内科」へ。このように、小児科は、複雑な思春期の不調に対する「総合的な窓口」となり、適切な専門家への「ゲートキーパー(門番)」としての役割を担ってくれるのです。どこに相談すれば良いかわからない、そんな時こそ、まずは子供の心と体の成長を見守ってきた、かかりつけの小児科医を頼ってみてください。