「朝、何度起こしても起きられない」「午前中は頭痛やだるさで動けず、学校を休みがち」「立ち上がると、めまいや立ちくらみがする」。もし、あなたのお子さんが、このような症状に悩んでいるのであれば、それは単なる「怠け」や「夜更かし」が原因ではないかもしれません。その背後には、「起立性調節障害(OD)」という、思春期に多い自律神経の病気が隠れている可能性があります。この病気は、体の成長に自律神経の発達が追いつかず、立ち上がった時に脳への血流が低下してしまうことで、様々なつらい症状を引き起こします。しかし、見た目には健康そうに見えるため、周囲から「やる気がない」と誤解され、本人も家族も深く悩んでしまうことが少なくありません。では、この起立性調節障害を疑った時、最初にどの診療科の扉を叩けば良いのでしょうか。最も専門的にこの病気を診断・治療してくれるのは、「小児科」、特に「思春期外来」や「自律神経外来」などを設けている小児科です。小児科医は、子供の成長・発達の過程を熟知しており、起立性調節障害が思春期特有の病態であることを深く理解しています。問診や、横になった状態と立った状態の血圧・脈拍を測定する「新起立試験」などを行い、診断を確定させます。そして、治療方針として、薬物療法だけでなく、日常生活での注意点(水分・塩分の摂取、ゆっくり起き上がる工夫など)や、学校との連携についても、包括的なアドバイスを提供してくれます。しかし、近所にかかりつけの小児科がない場合や、高校生以上で小児科に行きにくい場合は、「内科」や「循環器内科」を受診するのも一つの方法です。心臓や血圧の専門家が、貧血や心疾患といった、似たような症状を引き起こす他の病気がないかを除外診断してくれます。また、精神的なストレスが症状を悪化させているケースも多いため、「心療内科」が適切な場合もあります。まずは、子供の心と体を総合的に診てくれる「小児科」を最初の相談窓口とすること。それが、出口の見えないトンネルから抜け出すための、最も確実な第一歩となるのです。