子供の病気について調べていると、「溶連菌感染症」と並んで、「猩紅熱(しょうこうねつ)」という病名を目にすることがあります。どちらも、いちご舌や発熱といった共通の症状があるため、混同されがちですが、この二つにはどのような違いがあるのでしょうか。実は、現代の医学では、猩紅熱は溶連菌感染症の「一つの特別な病型」として位置づけられています。つまり、原因となる病原体は、どちらも同じ「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」なのです。では、何が違うのかというと、それは感染した溶連菌が「発赤毒(ほっせきどく)」、別名「発疹毒」という特殊な毒素を産生する能力を持っているかどうか、という点です。ほとんどの溶連菌は、この毒素を産生しません。そのため、通常の溶連菌感染症では、主な症状は発熱、喉の痛み、そして、いちご舌といったものに留まります。しかし、発赤毒を産生するタイプの溶連菌に感染すると、その毒素が血流に乗って全身を駆け巡り、皮膚の毛細血管を拡張させます。その結果、喉の症状に加えて、全身に鮮やかな赤い、細かい発疹が広がるのです。これが「猩紅熱」です。猩紅熱の発疹は、首や胸から始まり、数日のうちに全身に広がります。特に、脇の下や肘の内側、股の付け根といった、皮膚がこすれやすい部分に強く現れる傾向があります。触ると、紙やすりのようなザラザラとした感触があるのも特徴です。また、発疹が消えた後、一週間から二週間ほど経つと、指先から日焼けの後のように皮がむけてくる「膜様落屑(まくようらくせつ)」が見られます。治療法は、通常の溶連菌感染症と全く同じです。原因は細菌であるため、ペニシリン系などの抗生物質を、十日間ほど確実に飲みきることが必要です。これを怠ると、リウマチ熱や急性糸球体腎炎といった、深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。つまり、猩紅熱とは、「発疹を伴う、少し派手な溶連菌感染症」と理解しておけば良いでしょう。症状が派手な分、診断はつきやすいですが、治療の重要性は変わりません。