舌がイチゴのように赤くブツブツになり、同時に、体にも赤い発疹が広がっている。この二つの症状がセットで現れた時、それは体の中で何らかの全身的な反応が起きているサインであり、医師はいくつかの代表的な感染症を念頭に置いて診察を進めます。まず、最も頻度が高いのが「溶連菌感染症」です。溶連菌は、喉の痛みや発熱を引き起こす細菌ですが、一部の菌株は「発赤毒(ほっせきどく)」という毒素を産生します。この毒素が血液に乗って全身に広がることで、皮膚に細かい点状の赤い発疹が現れるのです。発疹は、首や胸、脇の下、股のあたりから始まり、やがて全身に広がります。触ると、紙やすりのようにザラザラしているのが特徴です。この、溶連菌感染症に特徴的な発疹を伴う病型を、特に「猩紅熱(しょうこうねつ)」と呼びます。猩紅熱も、通常の溶連菌感染症と同様に、抗生物質による治療が不可欠です。次に、前述の通り、常に鑑別診断として重要なのが「川崎病」です。川崎病でも、高熱やいちご舌と共に、体に不定形な発疹が現れます。溶連菌感染症の発疹が細かい点状であるのに対し、川崎病の発疹は、麻疹様であったり、風疹様であったりと、様々な形をとります。また、溶連菌感染症であれば、抗生物質を飲み始めると速やかに解熱しますが、川崎病の場合は、抗生物質は全く効かず、高熱が持続します。この治療への反応性の違いも、二つの病気を見分ける上で重要なポイントとなります。さらに、ウイルス感染症でも、いちご舌に似た舌の変化と発疹が見られることがあります。例えば、「手足口病」でも、口の中に発疹が多発し、舌が赤く見えることがあります。また、稀なケースとして、ブドウ球菌などが産生する毒素によって引き起こされる「毒素性ショック症候群(TSS)」でも、高熱や血圧低下と共に、いちご舌や全身の発疹が見られることがあります。これは極めて重篤な状態です。このように、いちご舌と発疹という組み合わせは、様々な病気の可能性を示唆します。自己判断は非常に危険ですので、必ず小児科医の診察を受け、正確な診断に基づいた治療を開始してください。
いちご舌に発疹が伴う時、考えられる病気とは