三十代も半ばを過ぎた頃から、私の体には奇妙な不調が現れ始めました。それは、はっきりとした回転性のめまいではないのですが、常に体が左右にゆらゆらと揺れているような、あるいは、柔らかい地面の上を歩いているような、ふわふわとした感覚でした。特に、パソコン作業に集中した後や、人混みの中を歩いている時に、その症状はひどくなりました。最初に私が訪れたのは、会社の近くにある「耳鼻咽痕科」でした。めまいと言えば、まず耳だろうと思ったからです。様々な検査を受けましたが、医師から告げられたのは「耳の平衡機能には、特に異常は見当たりませんね」という言葉でした。次に私が向かったのは、少し大きな病院の「脳神経外科」です。もしかしたら、脳に何か問題があるのではないか、という不安があったからです。MRI検査を受け、緊張しながら結果を聞きましたが、これもまた「脳に異常はありません。心配ないですよ」とのこと。安心した反面、「では、この不快な症状の原因は一体何なのだろう」という、先の見えない不安は募るばかりでした。その後も、私は「整形外科」(首こりが原因かと思ったから)や、「循環器内科」(血圧の問題かと思ったから)など、いくつかの病院を転々としました。しかし、どこへ行っても結果は同じ。「異常なし」。まるで、ドクターショッピングをしているかのような状態に、私は心身ともに疲れ果てていました。そんな時、知人から「もしかしたら、自律神経の問題じゃない?」と、何気なく言われました。そして、勧められたのが「心療内科」でした。正直、精神的な問題だとは思いたくありませんでしたが、藁にもすがる思いで受診することにしました。心療内科の医師は、私のこれまでの経緯や、仕事のストレス、生活習慣について、一時間以上もかけてじっくりと話を聞いてくれました。そして、「あなたの症状は、典型的な自律神経失調症によるものです。体は正直ですから、ストレスが限界に達すると、めまいという形でサインを送ってくるんですよ」と、優しく説明してくれたのです。その瞬間、私は、長年の謎が解けたような気がして、思わず涙がこぼれました。病名がつき、原因がわかったこと。それが、何よりの薬でした。そこから、生活習慣の改善と、漢方薬による治療を始め、私のふわふわめまいは、少しずつ、しかし確実に改善へと向かっていったのです。
私がふわふわめまいで病院を転々とした話