自律神経失調症の症状は、実に多岐にわたります。「全身倦怠感」という漠然としたものから、特定の臓器に現れるはっきりとした症状まで様々です。そして、特定の症状が強く出ている場合、いきなり心療内科へ行くよりも、まずはその症状に対応する専門科で「重大な身体的疾患がないこと」を確認(除外診断)する方が、結果的に安心して治療に専念できることがあります。ここでは、代表的な症状別に、最初に相談すべき診療科の目安をご紹介します。めまい(特に、ぐるぐる回る回転性めまい)まず受診すべきは「耳鼻咽喉科」です。めまいの多くは、平衡感覚を司る内耳のトラブル(良性発作性頭位めまい症、メニエール病など)が原因です。耳鼻咽喉科で耳に異常がないことを確認することが第一歩です。動悸、息切れ、胸の圧迫感まず受診すべきは「循環器内科」です。狭心症や不整脈など、心臓の病気が隠れていないかを、心電図や心エコー検査で調べてもらう必要があります。命に関わる可能性もあるため、最優先で確認すべき項目です。頭痛(特に、これまで経験したことのない激しい頭痛)まず受診すべきは「脳神経外科」または「神経内科」です。くも膜下出血や脳腫瘍といった、緊急性の高い脳の病気でないことを確認するため、CTやMRI検査が必要になる場合があります。胃の痛み、吐き気、下痢や便秘の繰り返しまず受診すべきは「消化器内科」です。胃潰瘍や逆流性食道炎、あるいは炎症性腸疾患などの可能性がないか、内視鏡検査などで調べます。過敏性腸症候群なども、自律神経の乱れと深く関わっています。これらの専門科で検査を受け、「器質的な異常は見つからない」と診断された上で、それでも症状が続く場合。その時に初めて、その不調の真の原因が「自律神経の乱れ」にある可能性が非常に高まり、満を持して「心療内科」の扉を叩く、という流れになります。この「まず、命に関わる病気を除外する」というステップを踏むことが、遠回りのように見えて、実は最も安全で確実な道筋なのです。