めまいと一言で言っても、その感じ方には大きく分けて二つのタイプがあり、それぞれ原因となる病気や受診すべき診療科が異なります。ご自身のめまいがどちらのタイプなのかを正しく認識することが、適切な医療に繋がるための重要な第一歩です。まず、一つ目のタイプが「回転性めまい」です。これは、自分自身か、あるいは天井や壁といった周囲の景色が、ぐるぐると高速で回転しているように感じる、非常に激しいめまいです。多くの場合、吐き気や嘔吐、冷や汗などを伴い、立っていることさえ困難になります。この回転性めまいの原因のほとんどは、体の平衡感覚を司る「内耳(三半規管や耳石器)」の異常にあります。代表的な病気には、寝返りや起き上がりなど、頭の位置を変えた時に数秒から数十秒の激しいめまいが起きる「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」や、難聴や耳鳴りを伴って数時間続くめまい発作を繰り返す「メニエール病」、風邪の後などに突然発症し、数日間にわたって激しいめまいが続く「前庭神経炎」などがあります。これらの病気は、いずれも「耳鼻咽喉科」が専門の診療科となります。一方、二つ目のタイプが「浮動性(ふどうせい)めまい」、すなわち「ふわふわするめまい」です。これは、体が雲の上を歩いているようにふわふわしたり、船に揺られているようにふらふらしたり、地に足がついていないような不安定感として感じられます。回転性めまいのような激しさはありませんが、常にすっきりしない状態が長く続くため、日常生活に大きな影響を及ぼします。このふわふわするめまいの原因は非常に多岐にわたります。上記の耳の病気の回復期に見られることもありますが、それ以外に、脳梗塞や脳腫瘍といった「脳の病気」、高血圧や不整脈などの「循環器系の病気」、ストレスや過労による「自律神経の乱れ」、あるいは薬の副作用など、様々な可能性が考えられます。そのため、原因の特定が難しく、耳鼻咽喉科、脳神経外科、循環器内科、心療内科など、複数の診療科の診察が必要になることも少なくありません。まずは、ご自身のめまいのタイプを医師に正確に伝えることが、診断の重要な手がかりとなるのです。