起立性調節障害(OD)と診断された後、病院では具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。ODの治療は、単に薬を飲むだけでなく、日常生活の工夫や、環境調整、心理的なサポートといった、多角的なアプローチを組み合わせて、根気よく行っていくことが基本となります。治療の目標は、つらい症状を和らげ、子供が自信を取り戻し、年齢相応の社会生活(主に学校生活)を送れるようにサポートすることです。まず、治療の土台となるのが「非薬物療法」、すなわち生活指導です。医師は、ODがどのような病気であるかを、本人と家族に詳しく説明し、それが本人の「怠け」ではないことを理解してもらうことから始めます。そして、日常生活で実践できる、具体的な工夫を指導します。例えば、脳への血流を増やすために、「水分を一日一点五~二リットル、塩分を多めに(十~十二グラム程度)摂ること」。立ち上がる時は、頭を下げて、ゆっくりと時間をかけて起き上がること。日中、特に午前中は、横になっている時間をできるだけ減らし、座っているだけでも良いので体を起こしておくこと。そして、症状を悪化させないために、適度な運動(ウォーキングなど)で下半身の筋力をつけ、血流を改善すること、などです。次に、これらの非薬物療法だけでは症状の改善が不十分な場合に、「薬物療法」が検討されます。ODの治療で用いられる薬は、病気そのものを根治させるものではなく、つらい症状を緩和し、非薬物療法を続けやすくするための「補助輪」のような役割です。主に、立ち上がった時の血圧の低下を防ぎ、脳血流を維持するための昇圧剤(血圧を上げる薬)が処方されます。また、症状に応じて、頭痛薬や、自律神経のバランスを整える漢方薬などが用いられることもあります。さらに、学校生活への復帰をサポートするための「環境調整」も、重要な治療の一環です。医師は、学校の先生に病気について正しく理解してもらうための「診断書」を作成し、体育の見学や、試験時間の配慮、そして何よりも「遅刻しても登校を認めてもらう」といった、具体的な配慮をお願いしてくれます。これらの治療を組み合わせ、焦らず、子供のペースに合わせて進めていくことが、回復への最も確かな道となります。
起立性調節障害の治療、病院では何をするのか