夏の暑い日、あるいはマタニティスイミングで体を動かしたい時、多くの妊婦さんが「プールに入っても、お腹の赤ちゃんに影響はないだろうか」「何か感染症にかかるリスクはないのだろうか」という疑問や不安を感じることでしょう。結論から言うと、健康な妊婦さんが、きちんと衛生管理されたプールを適切に利用するのであれば、過度に心配する必要はありません。しかし、いくつかのリスクと注意点を正しく理解しておくことが、安全に楽しむための大前提となります。まず、多くの妊婦さんが心配するのが、「膣から水が入って、細菌に感染し、赤ちゃんに影響が及ぶのではないか」ということでしょう。しかし、健康な妊娠状態であれば、子宮の入り口は子宮頸管粘液によって固く栓がされており、さらにその奥は卵膜によって守られているため、プール水が直接子宮内に侵入し、赤ちゃんに感染が及ぶという可能性は極めて低いと考えられています。プールの水は、法律で定められた基準に基づき、塩素によって適切に消毒されており、病原性のある細菌はほとんど存在しません。ただし、注意が必要なのは、プールサイドや更衣室、シャワー室といった、湿気が多く、人の往来が激しい場所です。これらの場所では、白癬菌(水虫の原因菌)や、ウイルス性のイボ(尋常性疣贅)などに感染するリスクがあります。また、塩素濃度が低い、あるいは利用者が非常に多いプールでは、結膜炎(はやり目)の原因となるアデノウイルスや、咽頭結膜熱(プール熱)などに感染する可能性もゼロではありません。さらに、カンジダ膣炎などの性感染症を持っている場合、プールの塩素が刺激となって症状が悪化することもあります。このように、プールそのものの水質よりも、プールという環境に付随する様々な感染症のリスクが存在することを理解しておく必要があります。そして、最も重要なのは、プールに入る前に、必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、許可を得ることです。切迫早産や前期破水のリスクがある、あるいは何らかの感染症にかかっているなど、個々の状態によっては、プールに入ることが禁忌となる場合があります。医師の許可を得た上で、ルールを守って楽しむ。それが、妊婦さんのプール利用の鉄則です。
妊婦はプールに入っても大丈夫?感染症のリスクを正しく知る