「もう高校生なのに、小児科に行くのは恥ずかしい」。そう感じるお子さんもいるかもしれません。しかし、子供の頃からずっとお世話になっている「かかりつけの小児科医」に、高校生になっても引き続き診てもらうことには、実は大きなメリットがたくさんあります。それは、内科では得難い、継続的なケアに基づいた安心感です。最大のメリットは、医師がその子の「成長と発達の全過程」を把握していることです。生まれた時からの体重や身長の推移、受けた予防接種の全履歴、過去にかかった病気やアレルギーの有無、薬に対する反応など、その子の健康に関する膨大なデータが、カルテには記録されています。この長年にわたる情報があるからこそ、現在の症状が、その子の体質からくるものなのか、あるいは何か新しい異常が起きているのかを、より深く、的確に判断することができるのです。例えば、長引く咳一つをとっても、それが単なる風邪なのか、あるいは幼少期からの喘息の兆候が再び現れたのかを、過去のデータと照らし合わせながら見極めることができます。また、小児科医は、体の成長だけでなく、思春期という多感な時期の「心の発達」にも精通しています。起立性調節障害や、ストレスによる心身の不調など、この時期に特有の悩みに対しても、専門的な視点からアプローチしてくれます。小さな頃から知っている医師だからこそ、高校生本人も心を開きやすく、親には言えないような悩みを相談できる、というケースも少なくありません。さらに、子供の頃から続く慢性疾患(アレルギー、喘息、てんかん、発達障害など)を抱えている場合、その病気の専門家である小児科医の継続的なフォローは不可欠です。病状が安定しているからといって、突然、内科に移るのではなく、成人医療を専門とする医師へ、適切な情報提供と共にスムーズに引き継いでもらう「移行期医療(トランジション)」をサポートしてくれるのも、かかりつけ小児科医の重要な役割です。子供から大人へと変化していく大切な時期だからこそ、その子の全てを知る専門家がそばにいてくれる。これほど心強いことはないでしょう。
かかりつけ小児科医に高校生が診てもらうメリット