小児科で「溶連菌かもしれない」と言われ、迅速検査を受けたけれど、結果は陰性。処方された風邪薬を飲んでいるのに、一向にいちご舌が治らない。そんな時、親御さんは「診断が間違っているのではないか」「何か他の悪い病気なのではないか」と、大きな不安を感じることでしょう。溶連菌検査が陰性であったにもかかわらず、いちご舌が続く場合、いくつかの可能性を考える必要があります。まず、最も考えられるのが、「溶連菌検査の偽陰性」です。迅速検査は、その場で結果がわかる非常に便利な検査ですが、その精度は100%ではありません。検査を行うタイミング(発症直後すぎるなど)や、喉の菌の採取がうまくいかなかった場合などに、本当は感染しているのに陰性と出てしまう「偽陰性」が、一定の確率で起こり得ます。もし、臨床症状(高熱、喉の所見など)から、医師が強く溶連菌感染症を疑う場合は、迅速検査が陰性であっても、より精度の高い「咽頭培養検査」を追加で行ったり、臨床診断に基づいて抗生物質の治療を開始したりすることがあります。次に、考慮すべきなのが、やはり「川崎病」の可能性です。川崎病の初期は、溶連菌感染症と症状が非常に似ているため、鑑別が難しいことがあります。溶連菌検査が陰性で、かつ、抗生物質が効かずに高熱が続き、目の充血や発疹など、他の川崎病の症状が徐々に現れてくる場合は、この病気の可能性を再度検討し、専門的な治療ができる医療機関へ紹介されることになります。また、他のウイルス感染症が原因である可能性もあります。アデノウイルスやEBウイルスなど、一部のウイルス感染症でも、喉が真っ赤になり、舌にブツブツとした変化が見られることがあります。これらのウイルスには特効薬はなく、対症療法で自然に回復するのを待つことになります。いずれにせよ、検査結果が陰性であったからといって、安心してしまうのは早計です。症状が改善しない、あるいは悪化していく場合は、必ず再度、医師の診察を受けてください。経過を注意深く観察し、診断を見直していくことが、本当の原因を見つけ出すための重要なプロセスなのです。